MDM(マスターデータマネジメント)への関心が高まっている。システムの適用範囲やシステム連携の広がりで、マスターデータ管理やマスターデータ統合へのニーズが顕在化しているからだ。だが、MDMはマスターデータに関わる課題を一気に解決してくれる夢のような仕組みではない。本連載では、MDMに取り組む際に必ず必要になるポイントを中心に、実践的な方法を解説する。

 具体的には、MDMへ取り組む際に必ず必要になる、以下のポイントを中心に取り上げる。

ポイント1:MDMの目的は何か?
ポイント2:MDMはコスト削減につながるのか?
ポイント3:MDMを成功させるためのアプローチ!
ポイント4:MDMパッケージ活用のコツ!
ポイント5:混同しやすいMDMに関する言葉の定義

 これらポイント以外にも、MDMのプロジェクト事例をベースに、MDMアプローチの解説や、MDMへ先進的に取り組む企業のマスター管理者の声の紹介、近未来のMDM世界予測なども取り上げる予定である。

MDMとタオルの素敵な?関係

 さてMDMへの実践的な取り組みについて話す前に、日常生活においても「マスターデータ」の大切さが潜んでいる。みなさんも日頃、何気なく使っているであろう「タオル」一つをみても、MDMの重要性に考えることができるのだ。

 筆者は毎日、お風呂から出ると、“普通サイズ”のタオルで身体を拭いている。以前はバスタオルを使っていたのだが、色々と熟慮を重ねた結果、使い終わると同時に洗濯へ回せる普通サイズのタオルを使うスタイルに収まることになった。

写真1●様々な大きさ、素材のタオルが存在する
[画像のクリックで拡大表示]

 ある週末、年会費形式の外資系スーパーへ家族で買い物に出かけた際に、本当に何気なく、安いながらも素材は悪くなさそうな大量のタオルをセットで購入した。2歳、5歳、8歳と、我が家のやんちゃ盛りの子供たちが日々消費するタオルの量を補うためだ(写真)。

 しばらくして、その外資系タオルとお風呂上りに出会うことになったわけだが、何かやたらと違和感を持ったのである。背中を拭こうと後ろに回すと、タオルのはじっこに手が届かずスッポ抜ける。以前からあるタオルと比較してみると、やはり寸足らずで幅広だった。どうやら縦横比率が違っているらしい。

 「まぁ、しょうがないか」と、しばし外資系タオルもローテーションに混ぜつつ、お風呂上りに体を拭いていたのだが、ある日ふと妙なことに気がついた。手が自然と外資系タオルを探しているのである。良く良く考えてみると、どうも拭き心地が良いのである。頭には巻けないし、身体をゴシゴシと洗うのにも向いていないのだが、「風呂上りの体を拭く!」という用途はバッチリなのだ。

 なにげなく使っているタオルであるが、使う目的や用途によって意外と様々な種類がある。調べてみると、我が家で以前から使ってきたタオルは、JIS規格で「JISL4105 浴用タオル」として定義されたものだった。寸法が幅33.5cm以上35.5cm未満、長さ83cm以上と決まっている。元々は日本古来の手ぬぐい(35cm×90cm)が大きさの由来のようである。

定義と状況を踏まえた意思統一が大切

 Wikipediaを見ると、タオルの種類としては、浴用タオル以外にハンドタオル、ボディタオル、バスタオル、スポーツタオル、ビーチタオルなどなどが紹介されている。その中で、JIS規格が定められているのは浴用タオルだけ。他のタオルには公式な定義がないようだ。

図1●「タオルとは何か?」の定義は、人それぞれに違う
[画像のクリックで拡大表示]

 さて、このタオルを例題に、マスターデータについて考えてみよう。まず、素朴な質問として「タオルとは何ですか」と問うた場合、その答えは、「手ぬぐい」「バスタオル」「ハンドタオル」など個々人でさまざまだろう。「タオルとは何か?」の定義が、それぞれに違うからだ(図1)。

 しかも、同じ人でも、「お風呂上り」や「真夏の駅のホームにたたずんでいる」「ジョギング中」など、置かれている状況によっては、思い浮かべるタオルは違ってくるだろう。

 こういった状況で必要なのは、ルールを定めることである。JIS規格のような公的機関のルールを使っても良いし、家庭内で取り決めても良い。ルールを定めることで、様々なタオルの違いを明確にした会話のキャッチボールが始められる。

 次に必要なのは、利用者の状況や背景を踏まえてタオルについての意思統一を図ることだ。俗に言う「頭では分かっているけど、体がいうことをきかない」状態である。例えば「タオル=浴用タオル」と定義していても、真夏の駅のホームで「タオルを持っていますか?」と聞かれれば、十中八九ハンドタオルを差し出してしまうだろう。

 こうしたルールの定義と状況を踏まえた意思統一において、間違いなく難しいのは、後者の「状況を踏まえた意思統一」である。ルールを決めるのは比較的容易だが、そのルールを理解して守ってもらうため状況や背景を考慮することが最も重要かつ最も難しい点である。MDMにおいても、全く同じである。このタオルの例を念頭に、本連載を読み進めてほしい。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。