本連載の第1回~3回では、ややもするとたなざらしになっていた自組織のBCP(事業継続計画)を「生きたBCP」へと磨きをかけるためのポイントを、東日本大震災の教訓を踏まえて解説した。

 最終回となる今回は、主として単独組織ごとに構築されてきた従来のBCPの限界を踏まえ、サプライチェーンを継続できるBCPの在り方を提言したい。

取引先にBCP策定を求めるだけでは不十分

 いかに事前に作り込もうと、取り決めた計画通りに行動するだけでは事業継続は難しい。災害が発生して以降の応用力の有無も重要だ。

 応用力といってもポイントは2つに絞られる。「トップの応用力(適切な方針決定や、的確な方針の迅速な発信・伝達)」と、「現場の応用力(BCPでの取り決めを軸にしつつ現場で適切な判断をすること)」だ。

 実際、震災対応事例としてよく取り上げられるオリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)は、トップと現場の応用力を、日頃の訓練を通じて養ってきた企業である。

 そして、こうした応用力を伸ばしていくうえで、必然的に行き当たるテーマがある。それが企業間や業界間での連携の強化だ。サプライチェーンが高度化した現代においては、サプライチェーンを意識したBCPの策定は必須である。

 今回の震災ではサプライチェーンの寸断や光熱水道・通信網の喪失といった、一企業、一組織のBCPだけでは解決できない多くの障害が起こった。過去の教訓を基に様々な対策を準備していたはずの自動車業界でさえ、今回の震災では完全復旧の見通しを立てるまでに2カ月近くを要した。個別組織におけるBCP構築や訓練だけでは、こうした障害に十分に対処することは難しいという新たな教訓が残った。

 もちろん震災が起こる前から、こうした課題は多少は意識されていたことだろう。BCP策定を部材調達先との取引条件に加えたり、策定状況を確認したり、合同で災害訓練を行うといった活動を行ってきた大企業もある。それでも今回の震災によって、連携がまだ不十分であることが明らかになった。

垂直統合的な企業間連携も再評価すべき

 サプライチェーンに関するBCPの問題点を、自動車業界の事例から考察すると、2つのポイントが浮かび上がる。「発生直後の情報収集態勢」と「代替戦略」である。

論点1 発生直後の情報収集態勢構築

 この論点は「サプライチェーンの可視化」と言い換えてもよい。例えば自動車業界における部品メーカーは、1次請けから5次・6次請けまで存在する場合があり、かなり複雑な階層構造でつながっている。この構造に対し、トヨタ自動車ですら震災当時は2次請け程度までしか実態を把握できていなかった。震災などの災害が発生したときは、3次より先のチェーンにある企業の被災状況も迅速に把握し、復旧を支援できるような仕組み作りが必要であろう(図1)。

図1●サプライチェーンの可視化
出所:アビームコンサルティング
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 部品の調達という重要業務の全体像が十分に把握できていないことは、復旧対策を講じるための意思決定を遅らせることになり、生産活動の復旧の障害ともなる。仕入れ側(調達元)は、材料や部品だけでなく、製造装置や測定機器、特殊な輸送機器、さらには燃料や電源といったエネルギーを含めたサプライチェーンの全体像を把握する必要がある。

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