第4回は、事業継続マネジメント(BCM)の在り方を見直すための10ポイントを紹介した。この中の「ポイント7 サプライチェーンの考慮:自社のみならず、顧客、サプライヤー、外部委託先、物流拠点等、海外を含めたサプライチェーン全体を対象として、経営者が主導する体系的なリスク管理の仕組みを構築しているか」を今回は掘り下げて解説する。

東日本大震災によるサプライチェーンへの影響

 東日本大震災では、サプライヤーやグループ子会社の被災、物流網の混乱などにより重要な部品や材料、資材の供給が滞り、生産活動に大きな影響が生じた。

 例えば自動車産業では、部品供給の途絶の影響は海外の自動車メーカーにも及び、米ゼネラルモーターズや米フォード・モーター、独オペルや仏プジョーでも操業停止や受注取りやめが生じ、一部では従業員の解雇に発展した。

 半導体市場では、茨城県ひたちなか市の半導体工場の被災による影響が特に大きく、発生から4カ月経過した2011年7月現在でも生産は以前の状態には戻っていない。半導体集積回路の製造工程には、もろい石英管やセラミックス部品が数多く使用されている。また、今回被災したのは回路線幅の小さい最先端の工場であり、しかも露光装置などの製造装置は大型で重量があるため、復旧に時間がかかっているのであろう。

 半導体の生産設備であるクリーンルームの天井や、グレーチング(鋼材を格子状に組んだ溝蓋)の床、ガスや薬液の配管類も、被災すれば復旧に長時間を要する。半導体は製造リードタイムが長いため、製造工程中の仕掛かり品が被災した場合、供給再開には数カ月を要する。自動車向けの生産品がSoC(システム・オン・ア・チップ=必要とされる機能を1チップに集積したもの)というカスタム品であるため、他工場での代替生産も容易ではなかったようだ。

 福島県にあるシリコンウエハーの最大手企業の工場も生産停止に陥ったため、世界中の半導体メーカーへの供給不足が懸念された。シリコンウエハーは日本企業がおよそ6割のシェアを握っているとされている。ただしこの影響はそれほど深刻化せずに済んだ。

 また、半導体以外にもコンデンサー、センサー、スイッチ、水晶振動子などの電子部品が生産停止し、国内外の電機メーカーへの影響が懸念された。こうした小型かつ高密度の電子部品も、日本の工場が停止したとき代替の調達先を確保することが難しい。

 食品・飲料業界では、製品の包装材を製造しているサプライヤーや、製品の物流倉庫で被災した影響が大きかった。また、ミネラルウオーターは、大手飲料メーカーが震災発生直後から大幅に増産したものの、水道水からの基準を超える放射性ヨウ素の検出や、ペットボトルのキャップメーカーの被災を背景に、供給不足に陥った。ただし、キャップの供給不足については、各社で異なっていたキャップの色や形を、飲料メーカー大手が白で無地のキャップに統一したことが、解消に奏功した。

 影響はJR西日本をはじめとする関西の鉄道の運行にまで及んだ。鉄道車両の保守部品である直流モーター用ブラシの素材を生産する茨城県日立市の工場が被災したうえに、最終製品を作る福島県浪江町の工場が原発事故の避難指示区域内にあったためだ。

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