今回はライフラインの観点から、被害想定の在り方を論じる。まず3つの大地震を振り返ろう。1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災、2004年10月23日17時56分に発生した新潟県中越地震、そして今回の東日本大震災である()。

表●大地震のライフラインなどへの影響
  阪神・淡路大震災 新潟県中越地震 東日本大震災
人身被害 ・直下型地震により家屋の倒壊で多くの方が死亡 ・自動車車内へ避難する人が多く、エコノミークラス症候群がクローズアップ ・津波により多くの方が死亡・行方不明
通信 ・当時はまだ携帯電話が普及していなかったため、固定電話が輻輳 ・携帯電話が普及し携帯メールが有効 ・津波地域では壊滅的被害、携帯メールも不通
・首都圏でも発信規制や携帯メール遅延
物流
(道路・
鉄道など)
・高速道路の倒壊
・交通規制が機能しなかった
・中山間地域の崖崩れが多発し物流が困難に ・津波地域では壊滅的被害
・精油所被災で燃料不足も
電力 ・復旧まで1週間程度 ・大部分は復旧まで1週間程度 ・津波地域では壊滅的被害
・福島第一原発被災で首都圏にも支障
・本震の後も余震により東北地域で停電発生
・道路の寸断や精油所の被災で、自家発電の燃料確保困難

建築物の耐震基準や交通規制などに教訓を残した阪神・淡路大震災

 まず阪神・淡路大震災の特徴の1つは、発生時刻が3連休明けの早朝だったことである。このため、多くの方が自宅で被災し、家屋の倒壊で死傷した。これは就寝中であったことに加え、当時の家屋の多くがまだ旧耐震基準(1981年の建築基準法改訂以前のもの)だったことが背景にある。

 大きな震災ではあったが、被害地域は比較的狭かった。このためにライフラインの復旧は比較的速やかで、不通だった期間は電気・通信が1週間、水道が1カ月、ガスが3カ月程度だった。工業製品のサプライチェーンの被害も比較的小規模で、自動車産業の操業停止は1日程度で済んだ。

 ただし通信面では、当時はまだ携帯電話が普及していなかったこともあり、固定電話の輻輳(ふくそう)が問題となった。交通面では、応援や復旧に駆けつけた車両により激しい渋滞が発生した。高速道路の倒壊があったうえに、交通規制がうまく機能しなかった。

 また、阪神・淡路大震災では政府や自治体における危機管理体制の不備が大きく浮き彫りになった。「関西に大地震が来ることを想定していなかった」との自治体側の釈明に対して批判が沸き起こったほか、自衛隊の出動命令などの遅れにより政府の危機管理体制に対しても厳しい批判の目が向けられた。

 一方、新潟県中越地震は土曜日の夕刻に発生した。この震災の特徴は、道路の崩壊や激しい余震により、企業が工場の被害状況の確認に手間取ったことである。

 ある企業では4日間停電が続き、真っ暗で余震が続くなか、工場内設備の被害状況が全く確認できなかった。別の半導体工場は、超精密加工を行う業態だったこともあり、本格稼働までに5カ月を要した。被害額として約500億円を計上した。

 通信面では、携帯メールが時間差はあるものの確実に届き、安否確認に効果的であることが確認された。

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