以下の記事は2007年から2010年にかけて日経ソリューションプロバイダ、日経コンピュータに連載された記事の1つです。執筆時の情報に基づいており、取り上げた製品・サービスには現時点で古くなっているものもありますが、商談の経緯を知ることはユーザー企業にとって有益と考え、再掲しました。

実績を重視し、外資系企業からパソコンも買ったことがない。こんな顧客企業の文化を知らず、外資系ベンダーが商談に飛び込んだ。コンサルタントの奮闘が不利な状況を変え始める。

 西日本鉄道が今年5月にスタートさせたIC乗車券サービス「nimoca」が、鉄道業界で注目を集めている。業界初の試みとして、カードの利用履歴と会員属性を掛け合わせられる顧客分析システムを加盟店に開放したからだ。

 「顧客分析を売り上げ増につなげるという提案が受けて、加盟店は順調に増えている」。nimocaの事業化を推進した西鉄のICカード開発室課長(現ニモカ事業サポート課次長)の奥村洋介と同室係長(現ICカード事業部係長)の杉本将隆は手応えに満足げだ。

 しかし、西鉄社内では顧客分析システムの導入に異論が多かった。導入の陰には社内を説得した奥村たちの熱意に加え、説得材料を提供し続けたコンサルタントの姿があった。その人物は、日本テラデータ流通・サービスソリューション事業部のプリンシパル・コンサルタントである田中康寛だ。

ニュースに独自の分析を加える

 テラデータ(受注当時は日本NCRのテラデータ事業部門、2007年9月に分離独立)の田中と西鉄の奥村の商談は、西鉄が外部のコンサルティング会社に知恵を求めたことから始まった()。IC乗車券の事業モデルを確立するため、2004年9月に実施されたコンペで、電子マネー機能などを提供する商業分野のコンサルティング契約を、テラデータが勝ち取ったのである。

表●日本テラデータ(当時は日本NCR)が西日本鉄道から受注を獲得するまでの経緯
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 コンサルティングの結果を受け、西鉄は2005年4月にIC乗車券向けのシステムを自ら運営する方針を固めた。システム調達の第一弾は、運賃の決済処理を担う「交通系」と、電子マネー機能やポイント制度の機能を提供する「商業系」の二つで構成する基幹系システムである()。

図●西日本鉄道が提供するnimocaを支える情報システムの概要
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 商談にはテラデータも参加したが、国産勢が競り合い、大手メーカーのA社が基幹系システム全体を一括受注した。IC乗車券システムの経験がないテラデータに勝ち目はなかったが、次に予想される顧客分析システムの商談につなげる狙いもあった。失注後も、テラデータの田中は西鉄との関係を絶やさなかった。月に2~3回、流通業や電子マネーなどの最新動向を提供し続けたのである。

 情報提供には、田中なりの工夫を凝らした。九州には情報が届きにくいであろう経済紙の東京地方面などに載ったニュースを主に取り上げ、関係者の分析や背景情報を加えて電子メールで送った。分析や背景情報は、田中が流通業界などの人脈を頼って関係者にヒアリングした、独自の情報である。

 田中は、機会を見つけては業界動向などの話題を携えて西鉄の本社を訪ねた。田中のオフィスは東京にあるが、この時期は九州や中国地方で顧客を開拓していた。これらの顧客先を訪問した足で、西鉄を訪問する約束を取り付けたのである。西鉄への訪問や情報提供は、コンサルティング業務の終了から1年あまり続いた。

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