以下の記事は2007年から2010年にかけて日経ソリューションプロバイダ、日経コンピュータに連載された記事の1つです。執筆時の情報に基づいており、取り上げた製品・サービスには現時点で古くなっているものもありますが、商談の経緯を知ることはユーザー企業にとって有益と考え、再掲しました。

さほどの期待を抱いていなかった顧客。印象を変えたのは、制度化されて間もない特定保健指導に対する深い業務知識だった。利用者目線のプレゼンが受注の決め手となった。

 「このプレゼンで第1号ユーザーを決めるぞ」。

 シンコム・システムズ・ジャパン(シンコム)の技術部長である八木邦芳は、こんな思いを込めて三菱電機ライフサービスの最終プレゼンに臨んだ。2008年9月19日のことだ()。

表●三菱電機ライフサービスがシンコム・システムズ・ジャパン(シンコム)に発注するまでの経緯
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 シンコムが提案していたのは、2008年4月に施行された健診制度「特定健康診査・特定保健指導」(特定保健指導)の業務を支援する「シンコム・ヘルスケア・システム-S」である。社員数25人の同社が、医療福祉分野への参入を狙って開発した戦略的な製品だった。

 開発を陣頭指揮したのが、技術部長の八木である。製品に対する八木の思い入れは、シンコム社内の誰よりも強かった。

業務に精通した担当者を同行

 三菱電機ライフサービスは、三菱電機の100%子会社で、主に三菱電機グループ向け福利厚生事業を手掛けている。通称、「メタボ検診」と呼ばれる特定保健指導も、事業の一つである。

 特定保健指導は、満40歳以上の社員のうち腹囲やBMI(体格指数)などの測定値が基準値を超えた社員に対し、生活習慣の見直しを支援する制度である。

 三菱電機ライフサービスでは、最初に管理栄養士が対象社員と個人面談し、体質改善のための取り組みや目標などを設定する。その後6カ月間、管理栄養士がメールで社員を支援する。

 これまで、同社は手作業で対応していたため、対象社員を100人程度に抑えていた。三菱電機グループには1万~2万人の対象社員がいる。システム化の狙いは、業務効率を高めてより多くの社員を支援することにあった。

 三菱電機ライフサービスのIT化推進室ビジネスIT化グループマネージャーである山田良彦は、シンコムを含めて19社の製品を検討していた。シンコム・ヘルスケア・システム-Sを知ったのは2008年7月上旬、情報収集に訪れた展示会でである。

 7月下旬、シンコムのソリューション営業部で部長代理を務める橋本葉子が、三菱電機ライフサービスの山田に電話を掛けて訪問の約束を取り付けた。

 橋本は、代表取締役マネージング・ディレクターの石村弘子と技術部長の八木に同行を願い出た。石村と八木は、シンコム・ヘルスケア・システム-Sを開発した中心メンバー。社内で最も特定保健指導の業務に精通していた。

 「特定保健指導は4月に施行されたばかりで業務に詳しい人材は少ない。現場をよく知る担当者の存在は、先方に安心感を与えるはず」と、橋本は考えた。

 8月9日、橋本は石村と八木を同行して三菱電機ライフサービスを訪問する。

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