「最も注力しているのは、システム運用を進化させることだ」。こう話すのは、日本通運の野口雄志 常務理事 IT推進部長である。同社が目指すシステム運用の進化とは、「システムのお守り役」から「インフラの企画・設計の担い手」となることを指す。

 同社はそれまで、「トラブルが発生しないよう、決まり事に沿って粛々と作業を進めるのが運用担当者の役割であると指示してきた」(野口常務理事)。

 これがクラウドの採用で状況が一変した。同社はプライベートクラウドを2010年11月から順次稼働。2014年をめどに、すべてのシステムをクラウドに移行する。

 これを契機に、運用担当者の仕事は「より上流の割合が高まった」(同)。アプリケーションの要件定義や設計の場に立ち会い、データの物理的な配置やバックアップ要件、ミドルウエアの選定について開発担当者と議論するようになってきたのだ。

 さらに、「どうすればシステムのハードウエアやミドルウエアといったシステムインフラをより早く提供できるか、質を向上できるか、コストを下げられるかを自ら考える習慣が付いてきた」と野口常務理事は話す。

企業システムの変化と軌を一に

 日本通運のように、クラウドの採用を機にシステム運用の変革を目指す企業が増えている。これは単なる「運用業務の上流シフト」ではない。クラウドによる企業システムの構造変化と軌を一にした動きと捉えるべきだ。

 クラウドを取り入れた企業システムは、個々に「インフラとアプリケーションの組み合わせ」で実現するのでなく、「全社共通のインフラ上で様々なアプリケーションを載せる」形を採る(図1)。しかもインフラは定期的に再構築を繰り返すのではなく、継続的な利用と改善を前提とする。

図1●変わるシステム運用担当者の役割
クラウドによって、運用担当者の役割は「システムのお守り」から「インフラの提供者」に変わる
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 インフラは自社サーバー、プライベートクラウド、パブリッククラウドのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)などの組み合わせで実現する。開発・保守担当者や利用部門などインフラの利用者は、インフラがどの物理サーバーで動いているかなどを気にすることなく、「インフラサービス」として使えるようになる。

 インフラがこのように変化すると、運用部門の役割も変わらざるを得なくなる。一口に言えば、「インフラの提供者」が主な役割となる。インフラの企画・設計も担当し、インフラの利用開始後は従来の運用業務である「システムの安定稼働」を実現しつつ改善を続け、寿命が来たら廃棄する。運用担当者は、こうしたインフラのライフサイクル管理を担うことで、インフラサービスを永続的に利用できるようにするわけだ。

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