日産自動車の新型小型車「マーチ」に採用された「Vプラットフォーム」では、モジュラーデザインの考え方が全面的に盛り込まれている。開発責任者の同社Nissan PV第一製品開発本部車両開発主幹(Vプラットフォーム)の小林毅氏によれば、「1つの図面」を実現できたことが画期的なポイントだという。

新型「マーチ」の骨格と、開発責任者の小林毅氏

 「1つの図面」とは、文字通り図面が1種類しかないことを意味している。車両の根幹を成すプラットフォームの図面が1種類だけなのは当然のようにも思えるが、たとえ「世界戦略車」のプラットフォームであっても、従来は販売地域などによって図面(設計)が異なることがほとんどだったという。

自ら崩してしまうことも

 なぜ、販売地域などによってプラットフォームに違いが生じてしまうのか。それは、各地域での製品企画や開発が同時並行ではなく段階的に進められているからだ。具体的には、最初に日本市場向けモデルを企画・開発し、それを基にして別の先進国市場向けモデル、その次に新興国市場向けモデルといったように、個別に企画・開発を行っていくことが一般的だった。必然的に、各モデルの企画・開発にタイムラグが発生することになる。このタイムラグが、各地域のプラットフォームに違いを生み出す原因となっていた。

 実際には、どのように共通化の構想が崩れていくのか。例えば、ある市場向けの開発を終えて、別の市場向けの開発に移る際、強度や振動対策などの項目でより厳しい要求を満たす必要が出てきたとする。部品のチューニングで対応できればよいが、それで対応しきれない場合は、部品の形状を変更したり、補強材を追加したりすることになる。こうした設計変更を何度も繰り返す過程で、プラットフォームの図面の種類がどんどん増えていくわけだ。

 さらに、市場ごとの要求仕様の違いがない場合でも、自ら共通化を崩してしまうことがある。例えば、設計段階で原価低減を十分に行えなかった場合、量産開始後も引き続き原価低減に取り組まなければならない。その際、共通化の重要性を薄々感じつつも、目先の原価低減効果に引きずられて設計変更を行ってしまうことがあった。加えて、開発期間のタイムラグがあると、その間に技術が進歩していることも多いが、「一般に技術者は進歩を採り入れたいと考えるので、結果的に図面が増えていく」(小林氏)という側面もある。いずれにしても、何が何でも共通化を維持するという意識で臨まなければ、簡単に崩れてしまうことが分かる。

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