第1試作前の初期構想では,四つの構想案を比較した(図1)。誤動作の可能性や操作に必要な力の大きさ,着脱の容易さといった項目ごとに,各構想案を評価した。開発を担当した今野製作所の事業企画室技術担当の斉藤剛氏は,自動車メーカーの生産技術部門から転職してきた技術者だ。「単に機能を実現できるかどうかだけでなく,実際に生産するときのコストにも配慮した」(同氏)という。

図1●初期構想の比較
操作性や扱いやすさ,外観などをポイントに複数の構想案を評価した。
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 このようにして決めた構想案に基づいて,第1試作に関するポンチ絵を作成し,具体的な構造についての検討を始める(図2)。試行錯誤が必要だといっても,実際に物を造るのには手間もコストも掛かる。それに対し「ポンチ絵は思ったことをすべて書ける。アイデアをまとめたり,人に見せて伝えるのに適している」(同氏)と,ポンチ絵で検討できることは,できる限り検討した。

図2●第1試作に関するポンチ絵
ブレーキロックやペダルの固定方法などについてのポンチ絵を作成し,試作に取り組んだ。
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 それでも実際には,第1試作は「大失敗だった」(同氏)。ペダルがうまく取り付けられなかったり,両方のペダルが同時に動いてしまったりと,運転補助装置としてうまく機能しなかった。

 そこで第2試作ではとりあえず,坂道などでの停車時に必要なブレーキロック機構は無視して,基本機能の検証に目的を絞った。ペダルへの取り付け性に関しても,自動車用品店などで売られているペダルを調査し,例えばアクセルペダルの裏面に当たるプレートに凹部を設けるなどの工夫を施した。

 第3試作では,ブレーキロック機構の検証を再開すると同時に,強度計算を加味した軽量化にも取り組んだ。強度計算に関しては,3次元CADやCAEも活用したという。3次元データ化することで,強度計算だけでなく動きの確認や,試作時の加工依頼にも活用できた。

 ブレーキロック機構に関しては,第3試作で基本的な仕組みを完成したものの,一つ課題が判明した。それは,ロックした後でもブレーキペダルをさらに押し込めるようにしたいというニーズへの対応だ。第3試作のブレーキロック機構では,ブレーキロックを解除しなければならない。

 この課題は,試作品を実際の自動車に取り付けて運転してみたからこそ発見できた。机上だけではなかなか見付けられない課題である。単なる機能の検証だけでなく,新たな課題を発見することも試作品による試行錯誤で得られる大きなメリットだ。

 ブレーキロックに関する課題に対応した第4試作による評価が完了した後は,詳細な設計に入る。耐久試験を含めた検証に使える,製品とほぼ同等の試作品に向けて課題を整理(図3)。そうして作製した試作品を使い,人間工学的な検証や耐久試験などを実施して完成させた。

図3●製品化へ向けての課題の整理
基本機能を確立できた第4試作で明らかになった課題を整理し,製品と同等レベルの耐久試験モデルまでに解決すべき内容をまとめた。
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 例えば,手で扱うグリップは,一般的な運転補助装置ではドライバーの左側(車体中央より)に設置する。これに対してSWORDでは,ドライバーの中央,両足の間に置く方法を構想段階で選択している。こうしたのは,リンク機構をなるべくコンパクトにできることや右手でも左手でも扱えること,センターコンソールが大きな車でも使えるといったことが理由だった。

 ただ,構想段階では良かれと思って採用した方法でも,グリップを一般的な位置と異なる配置にしたことに変わりはない。操作時に無理な動きがないかなどを人間工学の面から,東京都立の高等専門学校の協力を得て,モーションキャプチャを活用して検証したのだ。