2点間の直線距離のバラつきだけを規制する寸法公差に対して,幾何公差は形状や姿勢,位置のバラつきを公差域という領域で規制する。これは幾何公差特有の考え方で,3次元の立体的な,もしくは 2次元の平面的な領域を与える。

 幾何公差を狙い通りに設定するには,頭の中で公差域を立体的にイメージして組み立てるという作業が必要となる。この作業はデータムの設定と並んで難しく,習得には訓練と経験を積み重ねるしかない。

 公差域は全部で 9種類あり,2次元の規制と3次元の規制に分けられる(図1)。中でも特に多く使用するのは,円筒内部の領域と平行2平面の間の領域だ。前者は主に円筒形体である穴や軸の中心線に対する規制に用い,公差値の前に記号「φ」を付けて指示する。後者は主に平面形体である平坦な表面や中心面に対する規制に用い,公差値の前に記号は付かない。

【図1】公差域
公差域の種類は全部で九つある。一般に3次元の規制を多く用いる。

 複数の離れた形体に対して同じ公差域を適用する方法も覚えておこう。同じ特性と公差値を適用する場合は,一つの公差記入枠とおのおのの形体に対する指示線を結び付けて指示できる〔図2(a)〕。ただし,こうして形状や姿勢の公差を適用しても,それぞれの形体間の相対的な位置は規制されない。つまり,この例のように二つの形体に適用した場合は,公差域は二つ存在することになる。

 これに対して,一つの公差域で複数の形体間の相対的な位置関係も同時に規制する方法がある。共通公差域という付加記号「CZ」を公差値の後に指示するのだ〔図2(b)〕。これは,平面度だけでなく,他の形状の公差や姿勢の公差についても適用できる。

【図2】複数の離れた形体に公差値を指示する
一つの公差記入枠とおのおのの形体に対する指示線を結び付けて指示すると,同じ特性と公差値を適用できる(a)。ただし,それぞれの形体間の相対的な位置は規制されないため,複数の公差域が存在することになる。共通の公差域を指示して,形体間の相対的な位置関係も同時に規制する場合は,共通公差域の記号(CZ)を使用する(b)。