エンジンとマフラーをつなぐ排気管は,多くのパイプ類や支持部品などで構成されるが,エンジン側から組み付けていく部品と車体側から組み付けていく部品の二つに分けられる。エンジンを車体に取り付けた後,最後に二つのパイプ(パイプAとB)のフランジ同士をボルトで締結する。

 ところが,ある車種で量産試作を実施したところ,パイプの穴位置が大きくズレて,ボルトが通らないという不具合が発生した。排気管には蛇腹部分があるため,その変形によってある程度のズレは吸収できるが,その許容量を超えていたのだ。

 そこで各部品の公差を再検討することになったが,パイプの形状は複雑でフランジ面の向きも一様ではない。3次元CADデータは既に存在していたので,3次元公差解析ツールを活用して検討を進めることにした。

 公差解析ツールでは,構成部品の3次元モデルに対して公差情報や接続部分の接触/拘束条件などを定義する。すると,各部品の公差に応じてパイプAとBの穴位置がどのように変化するかを3次元モデルで確認できる。同時に,このズレに影響する各部品の公差の寄与率が算出される。

 解析の結果,パイプCのフランジ面の平行度が最大の寄与率となるなど,各パイプのフランジ面に指定した姿勢の公差の寄与率が高いことが判明。これらの公差を厳しくすることで,穴位置のズレ量を目標値(Δt)より小さく抑えた(図1)。

【図1】●フランジ面の解析結果
寄与率が高かったフランジ面の姿勢公差を厳しくすることで,穴の位置ズレを目標値よりも小さくできた。『いすゞ技報』第119号を基に,本誌が作成。

 こうして活躍を始めた公差解析ツールだが,設計者が直接扱うには操作がまだ難しい。このため,現在は専任者が公差解析を実行している。同社では解析手法のマニュアル化などを進め,設計者への展開を進める計画だ。

 公差解析ツールの操作が難しい理由の一つは,現状では適用できる範囲に制限があること。例えば,部品と部品の接触を定義する場合,双方の形状によっては解析できないことがあるのだ。  ローランド ディー.ジー.(以下,ローランドDG)が公差の計算に公差解析ツールを適用した際,V溝に接触する円筒形のガイドピンを,そのままの形状では解析できなかった(同社の適用事例については次回,紹介する予定)。そこで同社はガイドピンをプラスドライバーの先端のように板が直交した形状に置き換え,さらにキャリッジのV溝も角溝で表現した(図2)。

【図2】公差解析ツール活用時の工夫
公差解析ツールでは,実際の製品形状をそのまま扱えない場合がある。例えば,現状のツールではV溝と丸棒,および平面と丸棒の接触は定義できない。そこでローランド ディー.ジー.は検討結果がほぼ等価となるよう,ガイドピンおよび溝の形状を変更し,平面と平面の接触で表現できるようにした。

 こうした置き換えが必要だったのは,同社が使用している公差解析ツールに,曲面と平面の接触を定義する機能がなかったため。円筒とV溝の組み合わせを,十字に組み合わせた2枚の板と角溝に置き換えることで,平面(板の先端面)と平面(角溝の底面)の接触として近似表現したのである。

 このように形状を置き換えたことに伴い,公差の値も変換した。具体的には,丸棒の公差値を倍している。これは,V溝と円筒の接触面が,キャリッジの移動方向に対して45°傾いているためである。

 ローランドDG第1製品開発部プロデューサーの杉山裕一氏は「(現状のツールで)できる部分とできない部分があるので工夫は必要。しかし,公差解析の結果が3次元CADデータの中に残るのは有用だ」と,そのメリットを強く感じている。公差を決めた根拠に関する情報を3次元データとは別に保管すると,後で参照しづらいからだ。同社が3次元公差解析ツールの利用を始めたのは2008年から。公差解析ツールの機能も年々向上しており,例えば前述の接触の問題も今では解決されている。