部門間で共通運用できるBOMを実現するカギは,一つは「繰り返し」の単位をうまく決めること,もう一つはその繰り返し単位にユニークな識別番号(ID)を振ること。当たり前のようだが,基本的にはこれで「何を繰り返すか」の情報が正確に伝わることになる。

 富士通のデジタル・モックアップ(DMU)ツール「VPS」を担当する事業部では,2008年後半になって,EBOMを基にMBOMを作成するためのツールとして使いたい,という要望を顧客から多く受けるようになった。その顧客の一つである精密事務機器メーカー(見込み生産主体)では,BOMの構成単位を「主組立ラインに供給する部品またはユニットの単位」としている。EBOMもMBOMもこれを構成要素の基本単位として用い,共通のIDで記述している。単位の決め方として,受注生産の場合でも一つの参考になると考えられる。

 組立ラインに供給するものは,単純な部品のことも,サブラインで組み立てられた複雑な中間組立品(アセンブリ)のこともある。この単位は,大手自動車メーカーでのMBOMでも採用されているもの。歴史的に見れば,MBOMの単位をEBOMにも拡張する方法と見ることができる*1

*1 例えば,アセンブリを組み付けるためのねじ4本を組立ラインに対して直接供給するという場合は,アセンブリもねじ(1本ずつ)も同じくBOMの基本単位になる。

変動要素も独立単位に

 この「組立ラインへの供給物」の単位が,繰り返しの単位になる。従って,この単位には製品ごとに仕様が異なる要素を含んでいてはいけない。

 オムロンの場合,例えば紙幣処理モジュール内の紙幣収納カセットには,顧客によって扉に鍵が付くことも付かないこともある。普通に考えれば,カセットがなければ鍵もないのだから,製品構成上は鍵をカセットの一部として扱うことになる。しかしそれでは,カセットの種類数が増えて,標準化が難しい。そこで鍵はカセットから独立させ,カセットと同格の基本単位としている*2

*2 紙幣処理モジュールは最終製品ではないが,繰り返しの単位をなるべく大きなくくりで実現するという基本的な考え方は文中の精密事務機器メーカーと類似している。

 見込み生産でも受注生産でも,モジュラー設計では製品開発時に,標準的な構成を決める。このとき設計は「組立ラインへの供給物」を意識する(図6上段)。ただし生産技術部門による検討の結果,サブラインでアセンブリに組み付ける予定の部品を,主ラインでの組み付けにするといった変更は常に起こる。変更があったら,それはEBOMに反映させ,製品構成はEBOMとMBOMも同じにしておく(図6下段*3

*3 複数の製品を生産しているうちに,生産現場での改良や,外注への変更,内製への変更といった生産上の要因により,MBOMの内容が変化していくことがある。この種の変化は,構成要素のIDにまで変化を及ぼすことは少ないので,EBOMにまでは反映させない。それでも,EBOMの変更をMBOMに伝えることは可能だ。

図6●企画・開発段階のBOM(部品表)の扱い
EBOMからスタートして,生産準備作業を進める。最初からMBOMと同じ単位(組立ラインへの部品供給単位)でEBOMを定義する(上段)。生産準備作業の結果,工程に変更があるときはEBOMにもその変更を反映させておく(下段)。後に設計変更などがあったとき,影響範囲がすぐに分かる(ある精密機器メーカーの例)。
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 受注生産の場合のBOMは,製品グループ単位の標準BOMを基に,受注案件(製番)ごとのBOMを作成することになる。標準的なBOMから変更のない部分はそのまま引き継ぎ,どうしても必要な特注仕様などの部分のみを変更する(図7)。こうすることで,BOMから,この製番に関する「組立ラインへの供給物」のうち,どれが以前の繰り返しになるかが分かる。新規部分についてのEBOMからMBOMの作成は,最近ではDMUツールで支援できる。

図7●標準BOMから派生させる形で個別受注案件の設計を実施
標準から変更のない部分は標準BOM(EBOM,MBOM)の内容を継承し,変更のある部分のみの設計,生産準備作業を実行する。
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