企業ネットワークにICTが浸透したことで、業務のペーパーレス化が進んでいる。加えて最近は、携帯性や表示能力に優れたスマートデバイスが登場し、さらにペーパーレス化を進めやすくなっている。そんな現在でも、契約関係書類、公的文書など各種帳票類となると、業種/業態を問わず、業務の根幹要素として印刷物が欠かせない環境となっている。プレゼンテーション、および会議用の資料も、まだまだ紙の配布物を求められるケースが多い。
一方、企業ではSaaS(Software as a Service)をはじめとするクラウドコンピューティングの採用や、データセンターにサーバーを集中配置したプライベートクラウドの構築が着実に進んでいる。また、パソコンやシンクライアントで仮想デスクトップを利用するためにDaaS(Desktop as a Service)基盤を導入する例も見られる。このようにアプリケーションがデータセンターに集中する環境になると、当然、出力処理もデータセンター側で発生することが多くなる。
この場合、最終的な紙の出力先となるプリンター(複合機)と出力アプリケーションがWANで結ばれることになり、従来のLAN環境とは印刷の環境が全く異なる。このため、LAN環境とは違った独自のプリント出力の機構が求められる。例えばクラウド側から、ファイアウォール越しでIPアドレスが見えない遠隔地のプリンターに確実に出力する仕組みが必要になる。ネットワーク帯域が限られることから、大量帳票や大容量データの高速出力についても、工夫を求められる(図1)。
後回しになりがちな印刷環境の整備
とはいえ、SaaS、DaaSといったクラウド環境の導入や、プライベートクラウド構築を検討する場合、どうしても、画面操作やアプリケーションの使い勝手に意識が向きがちになる。帳票印刷対策は業務量の把握が難しいこともあり、他の作業に比べると、プライオリティーが低く後手にまわりがちである。そのためシステム導入後に問題が顕在化し対処不能となるケースが少なくない。
そこで今回は、クラウド基盤からの安全/確実な印刷を可能とする仕組みを実現するソリューションを考えることにする。
全国に点在する拠点を持つ流通業のA社が、サーバー集約、業務システムの刷新に当たり、SaaSを導入しようとしているケースを想定する(表1)。様々な場所、端末からの利用を想定し、仮想デスクトップ環境(DaaS)も利用する。これに伴い、クラウド上のアプリケーションからの帳票印刷を実現するために、既存の各種プリンターを流用し、生産性を損なうことなく帳票を印刷できる環境を構築することにした。
■データ圧縮でWAN越しの大量印刷を高速に、ズレのない帳票出力は大前提
■既存プリンターを生かしつつ認証印刷も実現、コンプライアンスへの配慮も忘れずに