正確な計算結果が欲しいならより細かなメッシュで計算すればよいが,むやみにメッシュを細かくするのは計算時間の増大につながり,必ずしも妥当とはいえない。前回の図3のような意匠形状なら成形上障害になるとは考えにくい。むしろ解析する必要性はないといってよいだろう。このような場合は,解析にかける前にあらかじめ削除しておくのが望ましい。

逆の場合もある。前回の同じモデルの図2(b)の解析結果を見てみよう。
ここは,折り曲げるために極端に薄肉化させている。解析結果を見てみると,この部分の両端の形状が崩れているのが分かる(図1)。やはりメッシュ生成時に形状が十分再現できていないのである。しかし,この個所を解析しないわけにはいかない。このような場合は,細かなメッシュで解析する。メッシュを細かくすれば,形状を正しく再現でき,より正確な結果を得られる(図2)。

上記のように,メッシュは解析結果に影響する。特に薄肉製品の場合,メッシュの粗密によって解析結果が変わりやすい。図3は同じ形状を,メッシュの粗さを変えて解析したもの。粗いメッシュでは成形にあまり問題がないように見えるが,細かなメッシュで計算すると,薄くなっている中央部の充填が遅れているのが分かる。こうした局所的な充填の遅れは「ためらい現象」と呼ばれ,品質に影響を及ぼす場合がある。十分な注意が要る。

設計者向けの解析ツールは,ウイザードに従って処理していくと,メッシュを確認する機会がないなど,ユーザーにメッシュ生成を意識させない仕組みになっているものも多い。メッシュの粗密を任意に制御できないものもある。しかし,そのようなツールでも「高精度解析モード」といった,より細かなメッシュで解析する機能を備えている。前回の図2(b)のように局所的に薄肉部がある場合は,こうしたモードを使うなどして,形状の再現性に気を配ってほしい。