ビーム要素で表現できるか

 前回紹介したような事情から、金型メーカーではゲートをどこに,幾つ設けるかといった検討を実行する。その際,ゲートのモデル化に注意してほしい。一口にゲートといっても複数の種類があるからだ。その中でも気を付けたいのがファンゲートと呼ばれる末広がりのゲートである。

 図1は,ファンゲートを使った解析事例。このモデル化を考えてみよう。通常,ゲートをモデル化する際にはビーム要素と呼ぶ1次元の近似モデルを使う。ところが,ビーム要素で計算すると図1(b)のように,中央部しか充填せず明らかに不自然な結果となる。

図1●ゲートのモデル化の問題
図1●ゲートのモデル化の問題
先が広がるファンゲートのモデル(a)と充填途中を示した解析結果(b)。(b)は射出開始から充填までにかかった時間を色分けして表示している。黄緑色に近づくほど時間がかかっていることを示す。ファンゲートを採用しているにもかかわらず,中央部の充填が極端に先行しており,明らかに結果がおかしい。
図2●ゲートのモデル化の問題
図2●ゲートのモデル化の問題
末広がりのファンゲートを,1次元のビーム要素で簡略化している。

 これは,ファンゲートをビーム要素で表現しきれないからである。ビーム要素はソリッドモデルのように3次元形状を忠実に再現したものではなく,長さだけを持った1次元の線に断面の大きさの情報を与えて立体を擬似的表現したものにすぎない。従って,計算上はファンゲートと製品部は1点でしかつながっていない(図2)。このため上記のような結果となってしまうのだ。

 ファンゲートを使う場合は,製品形状同様に,いったんCADなどを使って正しい形状モデルを作成するのが望ましい。ファンゲートの形状を忠実に再現しているので妥当な解析結果が得られるはずだ(図3)。ゲートだからといって安易にビーム要素を適用せず,解析モデルを作成する前に1次元のビーム要素で形状を近似して問題がないかどうかを考えてほしい。少々手間がかかるが,この方が結局近道のはずだ。

図3●ファンゲートをモデル化
図3●ファンゲートをモデル化
製品形状と同様にファンゲートの形状も作成したモデル(a)と充填時間の解析結果(b)。樹脂がファンゲートから扇形に広がり,正常な充填パターンとなっている。