MFRにとらわれない

図1●流動性が悪いとショートショットが発生
図1●流動性が悪いとショートショットが発生
2点ゲートのモデルを,別の樹脂データで解析した。緑色は充填の確実性が高い領域,黄色は中程度の,灰色の部分はショートショットが発生して充填されないであろう領域を示す。同じガラス繊維30質量%入りのPBT樹脂だが,流動性が悪いためショートショットが発生する。

 解析結果を左右するのが樹脂の物性。顧客の製品メーカーからは製品形状データや図面が渡されるとともに材料の種類を指定されるが,材料メーカーや樹脂の品番までは指示がないことが往々にしてある。同じ種類の樹脂なら同じような物性だろうと思って適当な樹脂データで解析するのは早計だ。同じ樹脂でも材料メーカーや品番が違えば結果は大きく異なる。例えば,第5回の図3の2点ゲートのモデルを同じガラス繊維30質量%入りPBT樹脂で解析しても,紹介した事例で使ったものより流動性の悪いPBT樹脂を使うとショートショットが発生する(図3)。

 では樹脂データはどうすればよいか――。顧客から特に指示がなければ,同じカテゴリーの材料から流動性の良いものを幾つか選んで解析し,顧客に提案するのが望ましい。だが,当社で使っている解析ツールの樹脂データベースにはPP(ポリプロピレン)で1300種,ガラス繊維30質量%入りのPBTでも150種が登録されている。一体どれを選べばよいだろう。

 この樹脂データ選定の際に,材料カタログに記載されているメルトフローレート(MFR)という指標を使う例をしばしば見掛ける。MFRは,一定温度に加熱した樹脂が一定時間内にオリフィスから流れ落ちる量を計測したもの。一般にはこの値が大きいほど流動性が良いと考えられている。

 ところが,これには問題がある。MFRは同じ材料メーカーの同カテゴリーの材料の流動性を比較するには有効だが,一般的な流動性の指標としては使えないのだ。MFRは温度依存性や樹脂が非ニュートン流体であることが考慮されていないからである。例えば,250℃では高いMFRを示しても,200℃では流動性が悪いという場合もある。従って,MFRが高い樹脂ではショートショットが発生したが,MFRが低い樹脂で成形するとうまくいったということも起こり得る。樹脂データを選定する際には,粘度プロフィールをきちんと確認し,粘性の低い樹脂を選ぶようにしたい。