企業にとって多くのメリットがあるクラウド基盤をいかに素早く構築するか---“クラウドスピード構築”は、すべての企業にとって、最重要課題になりつつある。

 そこでITpro Activeでは、ITpro Active製品選択支援セミナー「クラウドスピード構築~ビジネスのスピードを加速~」を、9月25日に東京で開催した。アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト金谷 敏尊氏が製品/サービスの最新動向とクラウド構築の進め方について解説したほか、主要ベンダーがクラウド構築やクラウド移行のための自社製品/サービスの特徴を紹介。最後に、『日経コンピュータ』誌の森山副編集長が、「プライベートクラウド構築・運用のコストを抑える方法について解説した。

基調講演
クラウドの最新動向とクラウド構築のポイント

 基調講演では、国内の先端ユーザー企業の動向に詳しいアイ・ティ・アールのシニア・アナリスト金谷 敏尊氏が、クラウドの動向やクラウド構築の進め方について解説した。

アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
金谷 敏尊氏

 「クラウドに至るITの発展は、電力システムのそれによく似ている」。講演の冒頭で、金谷氏は、クラウドの発展を電力システムにたとえた。

 電力の場合、初期には工場内に発電機を設置して使っていたが、技術が発展して外部への供給が可能になり、送電技術が整うにつれて「ユーティリティ化」していった。「電力システムと同様に、クラウドは一過性のものではなく、破壊的な運用性、効率性をもたらす大きなトレンドととらえるべきだ。現在のパブリッククラウドの市場規模は1200億円ほどで、2.2兆円のアウトソーシング市場に比べればまだ5パーセントに過ぎないが、爆発的な成長力を持つ」と、金谷氏は語る。

仮想化統合によるコスト削減分を、クラウド移行の原資に

 金谷氏は、「日本の企業は、プライベートクラウド志向が強い」と言う。その構築方法には、オンプレミス型のプライベートクラウドと、外部事業者を利用するバーチャルプライベートクラウド(VPC)の2通りがある。

 VPCは、プロバイダが決めた標準的な環境と運用手順を使ってプライベートクラウドを作るもので、LANと同様にセキュアな環境を構築でき、しかも様々なアプリケーションを利用できる。プロバイダのリソースを使うので、ある程度の需要変動にも対応できる。「VPCには、VM単位に課金するパブリッククラウドに近いタイプやリソースプール単位で課金するタイプがある。ニーズに合わせて選択してほしい」(金谷氏)。

 金谷氏の予想では、クラウドアーキテクチャは今後10年から20年の間に、2つの形に収れんする。1つは、自社でリソースを持たない「持たざる経営」派(利用型)。「ITがコア業務ではないと認識する企業は、まとめて外部に委託するようになる。この場合は、VPCが大きな選択肢になる」(金谷氏)。

 もう一つは、自社でリソースを持つ「自前主義」派(所有型)だ。「ITがコア業務の企業は、自分たちでコントロールしたいために、オンプレミス型になる。その場合は、自社データセンターにプライベートクラウドを構築することになる」(同)。

 ただし、「現実には、仮想化統合を実施して、そこで終わってしまうケースはすごく多い」と、金谷氏は指摘する。「仮想化統合はコストの削減にはつながるが、メリットは小さく経営幹部への訴求力は低い。仮想化統合を実施してコスト効果が出たら、それをパブリッククラウド移行やプライベートクラウド移行のための原資として使うべきだ」(金谷氏)。

データセンターとIaaSの評価方法

 クラウドへの移行では、データセンターの選定も重要になる。金谷氏は、「まず構想化フェーズでロケーションを選定し、その上でスペックを評価する選定フェーズに進むべきだ」という。

 ロケーション評価では、原発や津波・落雷などの自然災害のリスクも評価しなくてはならない。交通の便や、付き合いのあるベンダーからの距離も考えるべきだ。海外のデータセンターの場合は、カントリーリスクや国際回線コスト、レスポンスタイム、ベンダーサポートなども考慮する必要がある。「こうしたロケーション評価で、メインセンターをどこに置くかを決めてから、具体的な選定に入るのが正しい手順だ」(金谷氏)。

 クラウド移行では、IaaSの評価軸も重要。IaaSの評価軸としては、特に、利用できるVM(仮想マシン)のラインナップや、対応ソフト、セルフサービスのメニューが使いやすいかどうか、どのくらいのリードタイムで環境が構築できるか、バックアップやディザスタリカバリのサービスを受けられるか---といった点が重要という。「まだ提供している事業者は少ないが、突発的なアクセスが集中した場合にリソースを自動的に拡張してくれるオートスケール機能の有無も評価したい」(金谷氏)。

コスト効果が大きいプロビジョニング

 プライベートクラウドの要求機能としては、「稼働監視」「プロビジョニング」「セルフサービス」「自動構成管理」「リソースプール管理」「メータリング/ビリング」という6つの機能を挙げる。コスト効果の視点では、特にプロビジョニングによって、大きく運用コストを下げられるという。

 VPCを利用する場合は、これらの機能の多くがサービスとして提供されるが、自社でプライベートクラウド基盤を構築する場合は、これらの全部あるいは一部を実装する必要がある。「多くのベンダーが販売しているプライベートクラウド構築用のアプライアンスやクラウド管理ツールの多くが、既にこれらの機能を備えている」(金谷氏)。

 「クラウドを推進するうえでは、ビジョンに照らして配置方針や移行方式を明確化し、そのうえで技術評価を行う必要がある。また、プライベートクラウドには、自社構築と外部利用(VPC)の大きく二つの選択肢があるので、自社の環境と要件を見据えて将来像を描くことが大事だ」と、金谷氏は最後に指摘した。

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