企業の従業員が個人所有する端末を使って業務を遂行する、「BYOD」(Bring Your Own Device)が注目を集めている。2011年以降、国内でもよく耳にするようになった。
きっかけになったのは、もちろん、コンシューマーに爆発的な勢いで広がりつつあるスマートフォンとタブレット端末である。スマートフォン、タブレット端末は、多くのユーザーが常に持ち歩く。またパソコン(PC)に比べてシンプルで、自分好みに「カスタマイズ」するユーザーも多い。こうしたことから、従来に比べて「この端末で仕事をしたい」という声が増えてきている。最近ではPCに関しても、米アップルのMacBook Air、米インテルのCPUを搭載した超薄型パソコンUltrabookなどの登場によって、BYODの機運が高まる傾向にある。
エンドユーザーから強まる圧力
実際のところ、日本ではBYODを実践している企業は、まだ決して多くはない。例えば本誌が2012年3月にモニター読者を対象に実施した調査では、BYODを認めているとした企業は約7%。今後認める予定を含めても15%に満たなかった。
それでも、若手社員を中心にスマートデバイスは着実に広がりを見せ、BYODを求める圧力もじわじわと強まっている。企業のIT部門も、いつまでも無視してはいられない状況にある。こうした状況を受けて、本誌では2012年2月号の本コラムで、BYODをテーマとして取り上げた。ただ、その後もベンダー各社のBYOD向けソリューションが、どんどん充実してきている。そこで今回、BYOD第2弾を企画。前回とは別のベンダーに提案を募った。
想定する案件は2月号と同じ、教育サービス事業を手掛ける中堅規模の企業でのBYOD導入プロジェクト(表1、図1)。アジアを中心にグローバル展開を進めるABC社が、今後の成長に向け、創造性、生産性の高い環境を実現しようとしているケースである。ベンダーには、前回ガートナーに作成してもらったものと同じ提案依頼書(RFP)を提示した。提案対象は端末から社内システムへのアクセス部分。PCとスマートフォン、タブレット端末への対応である。基幹システムや各種データは既に整備されている社内システム環境を前提とする。
■最先端の端末で生産性を高めるとともに、従業員のモチベーション維持
■最大のポイントは情報漏洩対策などセキュリティ確保。利用ルールの整備も重要