企業内外に存在する多種多様で膨大なデータ資産の生かし方が事業の優劣を決め、企業の競争力を左右する――。ビッグデータ活用が注目を集めるなか、企業はどのような姿勢で取り組めば成果につなげることができるのか。ビッグデータ活用を成功に導く勘所を、識者や先進ユーザー企業、ベンダー企業へのインタビューを基に紹介する。

 第1回は、経営戦略論やITイノベーションを専門とする元橋一之 東京大学教授に、企業経営におけるビッグデータの意義や有効活用方法を聞いた。

(聞き手は田島 篤=ITpro副編集長)

企業経営において、情報システムに蓄積したデータを活用することの重要性は、昔から指摘されています。なぜ今、改めてビッグデータが注目されているのでしょうか。

 それには、大きく2つの要因があります。1つは、企業の経営環境が最近になって大きく変化したこと。もう1つが、情報システムで扱えるデータが質と量、鮮度のすべてで激変したことです。

企業の「経営環境」と「扱うデータ」の両方が大きく変化

元橋 一之(もとはし かずゆき)氏
元橋 一之(もとはし かずゆき)氏
経済産業省、経済協力開発機構(OECD)勤務、一橋大学助教授を経て、2006年から東京大学工学系研究科教授。経済産業研究所ファカルティフェロー。東京大学工学系修士、コーネル大学MBA(経営学修士)、慶応義塾大学博士(商学)。専門は、計量経済学、産業組織論、技術経営論。主な著書に『日本のバイオイノベーション』(白桃書房)、『ITイノベーションの実証分析』(東洋経済新報社)、『日本経済競争力の構想』(日本経済新聞社)などがある。ホームページはhttp://www.mo.t.u-tokyo.ac.jp/ 
(写真:都築 雅人)

 まずは、経営環境の変化について考えてみましょう。現在、日本企業を含めて、先進国のほとんどの業種でビジネスの範囲がグローバルに広がってきています。これは大企業だけには限りません。製造業などでは、中堅・中小の企業でも取引先や顧客を日本国内に限定していては成長が期待できません。金融業やサービス業でも、同様の傾向が見られます。

 さらに、一昔前とは比較にならないほど、ビジネスのスピードが上がってきています。今ほどグローバル化が進んでいない時代であれば、取引先や顧客は安定的で、そして競争相手が誰であるかは常に把握できていました。しかし、現在は取引先や顧客、競争相手の顔が見えなくなりつつあります。自社の競争相手は欧米の先進企業だけだと思っていたら、突然にアジアの新興企業が現れて顧客を奪っていったり、逆にそうした企業が有望な取引先になったりといったことが日常的に起こっているのです。現在の経営環境は、どこの企業にとっても脅威とビジネスチャンスが広がっている状況だといえます。

 このような中で勝ち残っていくためには、脅威とチャンスがどこにあるのかを常に見極めることが欠かせません。ビジネスの現場で収集した情報を社内の会議などで経営層にまで上げていくことは、昔も今も重要ですが、それだけでは情報の量と鮮度の両面で十分とはいえません。他社に対して優位性を維持するには、サーチすべき情報の範囲が圧倒的に広がったのです。だからこそ、ビッグデータを活用することが注目されているわけです。

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