リコーは全世界のグループ企業で利用するクラウドサービス基盤「グループ共通ITインフラ」を稼働させた。事業部門が個別にサーバーなどのインフラを調達していた“サイロ型”からの脱却が狙いだ。ITガバナンスの強化とコスト削減を実現するだけでなく、新サービスを投入するまでの期間を最大で従来の4分の1に短縮する効果も狙う。

 2012年5月10日、リコーがグループの総力を挙げて開発したクラウドサービスが始まった。クラウド上に格納した文書をデジタル複合機やタブレット端末から印刷できるサービス「フレックスリリースCX」だ(写真)。

写真●リコーがクラウドサービス基盤を活用して構築した印刷サービス
写真●リコーがクラウドサービス基盤を活用して構築した印刷サービス
クラウド上に文書ファイルを蓄積。必要に応じてタブレット端末や複合機などから印刷を指示する

 タブレット端末を利用したペーパーレス化などで、紙への情報出力は将来的に激減する方向にある。トナーなどの消耗品で儲ける勝ちパターンが通用しなくなるため、事務機メーカーはクラウドサービスとの併売など新たな市場を切り開く必要に迫られている。

 事務機と連携するクラウドサービスは、キヤノンや富士ゼロックスなどの競合メーカーが先行している。リコーにとって、フレックスリリースCXは反転攻勢の旗印となるものだ。

 この新サービスは企画からサービスインまでわずか半年で実現した。従来であればインフラの検討も含めて、1年以上はかかったものだ。これを可能にしたのが、リコー各社が利用するクラウドサービス基盤「グループ共通ITインフラ」だ。2011年度から13年度までの3年間で20億~30億円を投じて、整備・拡張していく。

 事務機と連携するクラウドサービスを強化するにあたって、リコーはシステム基盤の改革を断行した(図1)。まずグローバルで共通の共通ITインフラを構築し、グループで活用していく方針を打ち出した。

図1●リコーにおけるクラウドサービスの課題と解決策
図1●リコーにおけるクラウドサービスの課題と解決策
サービス基盤となる共通ITインフラを整備することで、様々な課題を解決した

 従来は利用部門がインフラも含めシステムを個別に調達していたため、新サービスの投入に時間がかかっていた。共通インフラがあれば、利用部門はアプリケーションを開発するだけで済む。これにより、サービス投入までの期間が最短3カ月と、最大で4分の1に短縮できるようにする。

 もう一つの改革が、システム部門の役割や組織だ。情報システム部門であるIT/S本部が、社内のITベンダーとして共通インフラを構築・運用する。

 実はこれまでのIT/S本部は、利用部門が顧客向けに提供するシステムの構築・運用には携わってこなかった。「社内システムの開発・運用が主な役割であり、“待ち”の姿勢だった」(IT/S本部の石野普之本部長)。これを機に利用部門の動きを先取りし、ビジネス要求に応えられる体制を整備した。

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