前回は、「これからのPLM(Products Lifecycle Management)」について、“製造業に影響を与えるキーワード”、“PLMベンダーの動き”(筆者の主観)、そして“これからのPLMで実現すべきこと”という視点で整理し、「これからのPLM」で実現したいポイントを示した(第16回:これからのPLM--そのコンセプト(1))。今回はさらに踏み込み、「これからのPLM」のコンセプトについて取り上げる。
「これからのPLM」のコンセプト(考え方・目指す姿)とは
「これからのPLM」のコンセプトは、ものづくり企業において、本質的に次のような姿を実現することである。
◆ものづくり企業の川上機能においては、先を見通した製品やサービスを企画・開発・設計するため、過去の作り込み時の情報(*1)、あるいは市場で起きたトラブルや知見情報(評判、比較情報など)も入手し、分析(*2)しながらベース製品やサービスの企画・開発・検証を行い、必要な情報を生成する。
*1 開発設計プロセスでは、収れんさせた成果物情報だけが蓄積されて広く生かされるが、収れん前の膨大な試行錯誤・知見など、無視されて再び使われることのない情報も多いため、今後はこのような情報も活用したい。
*2 市場投入後、製品やサービスの実稼働状況や市場での評価情報を収集・分析し、イノベーションに活用できるようにする。いわゆるM2Mを含むBigDataの手段をPLMのコンセプトに取り込んで、目的を明確化していくとよいと考えている。
◆次の工程(量産型なら派生製品の詳細設計、個別受注型なら受注製番の詳細設計)では、効率的に設計するために上流から得たベース製品やサービスの情報(*3)を加工し、さらにそれらの情報の整合性を適度に管理する。
*3 製品の設計情報、BOM(Bills of Materials)情報、成果物情報、プロジェクト情報、原価情報など。
◆製品やサービスのライフサイクル(*4)にわたり、国内外の自社拠点間はもちろん、パートナー企業との間も含めたプロセス間に必要な情報を徹底的に活用(*5)し、できる限り一気通貫(*6)に連携活用する。
*4 企画~開発・設計~生産準備~購買・生産~販売~保守・サービス~市場~廃棄・リサイクルに至る流れ。
*5 製品設計データを公差解析やCAE、CAMなどのデータとして応用活用するなど。
*6 一気通貫の典型例はBOM連携である。引き合いBOM(個別受注の場合)~設計BOM~生産準備BOM~生産(個別受注では製番)BOM~サービスBOMなど、製品やサービスのライフサイクルにわたるBOM間の情報連携(構成管理、変更管理を含む)