汎用的なIAサーバーの内蔵ディスクなどを利用して、業務に用いるストレージを構成できる「ストレージ仮想化ソフト」に大手ベンダーが注力し始めた。専用ストレージ装置と比べて約半分の容量単価を実現できる。高速なSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の価格が下がってきたことで、性能もミッドレンジの専用ストレージ装置に追いつきつつある。

 企業の情報システムを支えるストレージといえば、これまではファイバーチャネル(FC)やiSCSIを用いたSANなどの専用ストレージ装置が主体だった。ところがここにきて、汎用のIAサーバーを複数台束ねたクラスタを“ストレージ装置”に変えるソフトウエア製品が相次いで登場している。いわゆる、「ストレージ仮想化ソフト」である。

 ストレージ仮想化ソフト自体は10年以上前からある製品だが、ここにきて特に注目を集めているのは、SSDの価格が下がってきたことがキッカケだ。入出力性能の高いSSDをストレージ仮想化ソフトと共に用いることで、汎用のIAサーバーでも専用ストレージ装置に匹敵する性能を実現できるようになってきた。

 こうした背景の下、米ヴイエムウェアや米EMC、米ヒューレット・パッカード(HP)、米マイクロソフトといった大手ベンダーが2013年になって相次いで新製品を発表したり、販売を強化し始めたりしている。いずれも500万円クラスのミッドレンジの専用ストレージ装置を置き換える力を持つ(図1)。コンピューティングの全ての要素を仮想化し、ソフトで制御できるようにするコンセプト「SDDC(ソフトウエア・デファインド・データセンター)」において、ストレージ仮想化はサーバー仮想化やネットワーク仮想化に続く最後のピースとして期待を集めている。

図1●ソフトベースのストレージ仮想化技術の概要
IAサーバーを用いて分散型のストレージを実現できるストレージ仮想化ソフトの新製品が相次いで登場している。ミッドレンジのSANの専用ストレージ装置を代替できる
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容量単価を約半分に

 IAサーバーをストレージに用いる利点は主に三つある。(1)汎用品のハードウエアを用いることでストレージの容量単価を大幅に安くできること、(2)容量の追加が容易なこと、(3)ほとんど使われていないIAサーバー内蔵ディスクを有効活用できること、である(図2)。

図2●ソフトベースのストレージ仮想化技術の利点
コストや容量のスケーラビリティなどの面で利点がある。IAサーバー内蔵ディスクを使うタイプであれば、新規のハード投資も必要ない
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 このうち最大の利点は、(1)の低コストであることだ。製品や構成によって幅はあるが、一般にSANベースの専用ストレージ装置と比較して容量単価を約半分にできる。

 例えば、マイクロソフトは2013年10月に出荷を開始したサーバーOS「Windows Server 2012 R2」に搭載したストレージ機能「Scale-Out File Server(SOFS)」を用いて、1ギガバイト当たり3.33ドルの容量単価を実現できるとする。この単価はSANベースのストレージの約半分だ。HPも同社のストレージ仮想化ソフト「StoreVirtual VSA(Virtual Storage Appliance)」を用いることで、容量単価を実に80%も削減できるとする。

 容量単価が下がるのは、ハードによるRAID機能などを省き、ディスク故障への対処をソフトで実現するためだ。ディスク単位の冗長性であるRAIDの代わりに、複数のIAサーバーのノード間の冗長性である「RAIN(Redundant Arrays of Independent Nodes)」でディスク故障に対処する。クラスタによる分散型の構成を採ることで単一障害点(SPOF)をなくし、ハード自体はRAID機能のない素のディスクの束である「JBOD(Just a Bunch of Disks)」を使えるため、安く上がる。

容量追加も汎用品で済む

 (2)については、容量追加の際、専用ストレージ装置のようにメーカー純正の装置やディスクを用いる必要がない。IAサーバーを追加したり、IAサーバーの内蔵ディスクを増やしたりすることで、手軽に容量を増やせる。

 (3)については、IAサーバーの内蔵ディスクは容量が数百ギガ~1テラバイトほどになっており、信頼性確保のために最低2台搭載する。それだけの容量があるにもかかわらず、サーバー仮想化用のハイパーバイザーやOSをインストールするくらいにしか使われていないことが多い。ハイパーバイザーの場合、インストール後のディスク占有量は数十メガバイトほど。ストレージ仮想化ソフトを使うことで、有効活用されてこなかった“埋蔵金”のようなリソースを生かすことができる。

 ストレージ技術に詳しい伊藤忠テクノソリューションズ クラウドストレージサービス企画開発課の菅博氏は「内蔵ディスクは中身が空いていることも多い。これを活用しようというのは良いアプローチだ」と評す。

 専用ストレージ装置をなくすことで、ラックスペースを削減できたり、サポートをIAサーバーのベンダーに一元化できるといった副次的な効果もある。「地方の中小企業などでは、専用ストレージ装置ベンダーのサポートが手薄で、郵送で修理受付するセンドバック対応のみということもある。IAサーバーベンダーの方が全国くまなくサポートしていることが多く、一元化には利点がある」(ソフトバンクBB C&S技術統括部ソリューションテクノロジー部 技術支援2課の白山貴之氏)。

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