Windows Azureはエンタープライズのクラウドコンピューティング利用を一変させるインパクトを持つ。連載の第1回となる今回は、エンタープライズクラウドコンピューティングを定義し、その環境へのWindows Azureの適応力の高さと、クラウド活用を加速させるMicrosoftのクラウドOSについて解説する。

本格始動するエンタープライズクラウドコンピューティング

 「エンタープライズクラウドコンピューティング」を語る前に、エンタープライズシステムとは何かを定義しておくべきだが、明確な定義は難しい。一般に企業向けシステムを「エンタープライズシステム」と呼ぶが、その対象業務は顧客管理から販売管理、在庫管理、営業支援、経理処理に至るあらゆる分野に及ぶ。それぞれの分野で扱う制度、法律、ビジネスモデルが違い、ビジネスロジックも多岐にわたるので複雑である。

 エンタープライズシステムの最大の特徴は、永続データの扱いにある。日本企業は、投資したシステムをその法定耐用年数の期間いっぱい使い続けようとする。そのため、長い期間の間にアプリケーションに変更が加えられても、アプリケーションが生成して蓄積したデータには永続性が求められる。たとえアプリケーションが稼働するハードウエアが壊れても、データが消失することは許されない。

 このエンタープライズシステムの宿命であるデータの永続性を保証するために、Reliability(信頼性)、Availability(可用性)、Serviceability(保守性)、Integrity(保全性)、Security(機密性)をいかに少ない矛盾のなかで組み上げるのかについて、先人たちがさまざまな知恵を絞ってきた。

 エンタープライズシステムをクラウドコンピューティングのアーキテクチャーを活用してさらに発展させるのが「エンタープライズクラウドコンピューティング」である。

クラウドコンピューティングにより実現できる高い信頼性と可用性

 クラウドコンピューティングにおける信頼性と可用性に関しては、次のことがいえる。自社でハードウエア資産とネットワークを所有し、グローバルにパブリッククラウドサービスを展開するMicrosoftと同じパフォーマンスを発揮しようとすることは、もはや無意味となっている。これは、「ビジネスをするのに自家発電装置を準備しますか?電気は電力会社のものを利用しますね?」という問いに対する答えや、「自宅の金庫と銀行の金庫、ビジネスではどちらを利用しますか?」という問いに対する答えに似ている。

 特殊な制御系システムなどの中には、オンプレミス(社内設置)で運用されるべきものが存在する。しかし、時代は事業の競争環境が目まぐるしく変化し、制度改正や法整備も進む分野のスピード競争の真っただ中にある。世界規模のサービス運営のノウハウを生かし、止まらない運用と堅牢なセキュリティを構築しているMicrosoftなどがサービスとして提供するクラウドコンピューティングに対し、必然性もなく“自家発電装置”や“専用金庫”を準備して維持するのはナンセンスである。

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