提案っていったい何なのだろう

 提案とそのための提案書作成は、BtoBビジネスでは特に重要で、BtoCで言うならテレビのコマーシャル(以下TVCM)のようなものだ。TVCMは一般的に15秒、30秒、1分の3種類が主で、用途によってはさらに長いものも存在する。時間が勝負のTV業界では、秒単位で企業が言いたいことや伝えたいことを凝縮して一つの映像にするので、その苦労たるや大変なことだろう。

 翻って、BtoB企業はどうだろうか。これまで多くの提案書を見ているが、相変わらず「提案」という二文字にふさわしくない、単なる商品やサービスの説明書にすぎないものが多い。例えば「営業幹部の挨拶」「機能説明(要求仕様書がある場合はその星取表)」「プロジェクト体制」「推進日程」「見積もり」といった内容を単にまとめただけの提案書をよく見かける。提供のサービスによって、お客さまにどうなってもらいたいか、お客さまの会社がどう変わるのか、どのような価値が生まれるのかといったコンセプトに触れているのが本来の提案書だと思うのだが、実際にはほとんど見たことが無い。

 では、提案書のあるべき姿を考えてみよう。

提案書の基本は、まずお客さまを知ろう

まず、徹底的にエンドユーザー(お客さま)の課題を探ってみる。

(1) まずは、直接お客さまから話を聞く
(2) 許されるなら、現場に入って作業などをじっくり観察する
(3) さらに許されるなら、エンドユーザーが困ったり、戸惑ったり、作業が中断するような場面で、できる限りその理由を教えてもらう。

 上記は「エスノグラフィー」という言葉で広がりつつある。元来は文化人類学の分野で使われていたが、昨今はお客さまの行動を、観察やインタビューによって調査する手法および、その結果から作成された文書を意味するようになってきた。

 もしこの提案前のオリエンテーションが、スーパーバイザークラスの方々の場合は、以下のことも聞きたい。

(4) 課題の列挙から入り、マネジメント観点での課題を探る
(5) エンドユーザーとの課題認識の違いを確認する
(6) 本来あるべき未来の姿を想像してもらう

 さらに、以下のような経営層の思いを知ることで、コンセプトの方向性がまとまりやすくなり、提案の精度も上がる。

(7) これまでの事業経緯や企業の沿革、社長メッセージ(ウェブサイトからの学習は必須
(8) 企業理念が記された書類やクレドカード(信念や心情、行動指針などが簡潔に記されたカード)
(9) 上場企業であれば、株主説明会資料などは提案書に有効

 提案書をまとめる際に、どうしても自社の会社概要や規模、独自技術や社員の能力・資格、それらに加えて体制や日程、見積もりなど、自社のことばかり考えてまとめがちだが、そればかりだとお客さま不在の提案書になってしまう。とくにITの分野では、RFP(Request For Proposal/提案依頼書)の要求機能表に対し◯×で埋めることだけに終始することが、提案書やその提案スタイルが薄っぺらになる理由ではないかと考えている。お客さまに響く提案書を作るには、お客さまを深く知ることが重要だ。

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