連載第1回と第2回では、現在の営業およびマーケティングについて、デジタルを活用していかに最適化していくかということを解説しました。第3回は「デジタルマーケティングへのシフト」というテーマで説明をしたいと思います。本稿の共通テーマであるデジタル化の加速によって、マーケティングそのもののあり方が大きく変わってきていますが、今回はその前提にある消費者の購買行動の変化を踏まえて改めて考えていきます。

1.デジタリゼーションとは何か

 ビッグデータやソーシャル、モバイルやクラウドなどの爆発的な普及によるデジタル化の流れは、第3次産業革命ともいわれる程のインパクトを与えるものであり、既存のビジネスモデルやオペレーションの前提を大きく揺るがしています。デジタル化がここまで大きなインパクトを生む背景には、コンピュータの性能や、通信ネットワーク速度が想像を絶するスピードで驚異的な進化を遂げているという事実があります。

 例えば1997年にチェス専用スパコンが当時の世界チャンピオンに勝ったことは有名な話ですが、物理的サイズでいえば遥かに小さいiPhone5の処理性能は、チェスの世界チャンピオンに勝ったスパコンの性能を凌駕するレベルになっています。さらに現在のモバイル通信速度は10年前のそれと比較すると、赤ちゃんのハイハイの
スピードが、ジャンボジェット機並みのスピードに進化したと例えることができます。

 こうしたテクノロジーの進化は、これまでにないビジネスモデルやビジネスアイデアを生むだけではなく、既存のインダストリーの枠を超えた新たなエコシステムを構築するような破壊的イノベーションを引き起こしています。単に働き方を変える、購買行動を変えるという表層的なことではなく、従来の企業活動の前提や産業の在り方を覆す大きな潮流だと言えます。

2.消費者の購買行動の変化

 デジタリゼーションを加速している重要な要素のひとつとして、まずソーシャルメディアが挙げられます。Facebookをきっかけに中東や北アフリカ全域に広がった民主化運動、”アラブの春”はソーシャルメディアが政治をも動かすことを世界中に示しました。“ソーシャルデバイド”ともいう言葉も数年前から登場しましたが、ソーシャルメディアを使って世界中と繋がろうとする消費者に対して、企業におけるソーシャルメディアへの対応は益々重要になってきています。ソーシャルメディアへの反応が企業の命運を分けた事例としてユナイテッド航空とデイブ・キャロルというあるミュージシャンの話を簡単にご紹介します。

 ユナイテッド航空を利用したカナダ人ミュージシャンのデイブ・キャロルは、3500ドルのギターを手荷物で預けたところ、搬送中に壊れてしまったそうです。その後、損害賠償を要求したのですが、応じてもらえなかったことに憤慨した彼は、恨みを綴った自作の曲をYouTubeに投稿しました。ユナイテッド航空は自社ブランドをさらし者にする動画が話題になっているにも関わらず、何の反応も示さず知らない間に起きている急激な騒動の広がりから背をそむけ続けました。この動画は、わずか4日間で100万回以上も視聴がなされ、その結果ユナイテッド航空の株価は10%も下落し、1億8千万ドルの損害に繋がったのです。

 その一方、デイブのギターの製造元であるテイラーギター社が示した反応は真逆のものでした。デイブが曲を投稿した数日後に社長自らがYouTubeに登場し、移動の多いミュージシャン向けにギターの梱包法などをアドバイスし、高いマーケティング効果を実現したのです。

 上記のソーシャルメディア上での対応は一例にすぎませんが、デジタリゼーションは消費者が購買に至る行動を大きく変えています。モバイル端末を持ち歩き、常にオンラインにつながった消費者たちは、好きな時に好きな場所で、様々な販売チャネルを利用して、ほぼリアルタイムに購買のために情報を入手したり、競合製品と比較検討をしたり、意思決定したりすることができます。またオンラインでも、オフラインでも、特定の顧客接点や販売形態に縛られず自由にチャネル間を行き来することもできます。

 さらに、消費者に提供される情報は、企業から発進されるものとは限らず、消費者同士でつながるソーシャルメディアのつぶやきなど、あらゆる方向から、様々なタイミングで、提供されるもので、もはや購買決定に至るプロセスを企業が一方的に制御できなくなっているのです。

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