経済産業省で議論されているデザイン思考

 2013年末より2014年3月末まで、経済産業省(以下、経産省)主催の「国際競争力強化のためのデザイン思考を活用した経営実態調査委員会」に委員として出席した。この委員会は、欧米で急成長している企業が取り組んでいるUX向上を目的としたビジネススタイルの中で、デザイン思考の導入がキーになっていることに着目している。経産省も、その関係識者を集め、知見を収集したうえで日本企業に展開し、結果として日本企業全体を成長軌道に乗せることを目的にしていると私は理解した。

 本分野で権威の大学教授を座長に、4企業から招請された有識者5名で、本委員会は構成された。これまでに社内外でUXに関わる数々の活動を行ってきたが、これらを認められての委員選出であり、真に日本企業が欧米企業と肩を並べ、成長する姿を見たかったという点を理由に、委員を引き受け、意気にも感じた。

デザイナーの特長はビジュアライズ(見える化)と仮説構築の力

 委員会では、デザイナーが特長的に持つビジュアライズや仮説構築力をベースとしたクリエイティビティをどのように社会に広め、そのための障害が何なのか、また、そもそも導入の意義や日本文化との整合性は取れるのかといった点が多く議論された。さらに知的所有権の課題や、導入スタイルの違いなど、議題は多岐に渡ったが、中でも印象に残ったのは、日本人ひとり一人の仕事に対する姿勢やモチベーションが、欧米のそれとは違い、真摯な仕事に対する取り組みだ。反面、ダイナミックな発想を重視し、イノベーションを次から次に起こしていく欧米の流れとの間には大きな隔たりを感じた。

 「和」の日本、「個」の欧米、といった構図にも見られるその違いは、今回のコラムシリーズで取り上げているES(従業員満足)ともつながる。

日本文化vs欧米文化

 アメリカ、イギリス、イタリアと駐在で移り住んだ経験から、一度日本と欧米のデザイン面からの比較文化論を執筆しようと思っていたが、多忙でなかなか実現できていない。その中で私が着目していたのは、「幕の内弁当」vs「フルコース」、「日本庭園」vs「洋風庭園」など、食文化や庭園文化であり、如実に日本と欧米の違いが見られる。与えられた空間や時間の中でいかにその精度を高め、密度を濃くするかに努める日本文化。一方、時の流れをも飲み込むような、そして、特に外への広がりを重視する欧米文化。

 ずいぶん前に日本文化は「縮みの文化」という本を読んだことがある。内向的とも取れる、その表現が正しいかどうかは分からないが、ハードウェアの技術面だけを切り取れば、正しいように思う。よりミクロに向かう日本、よりマクロに広がる欧米、その原点がデザイン思考であり、イノベーションの兆しを見落とさないなどの特徴をそこに見る。言葉を換えればクラフトマンシップの日本とダイナミズムの欧米。精緻な造りと完成度の高さを求めるクラフトマンシップ、一方グローバル化やフラット化など、世界を駆け抜けるパラダイムシフトの波に確実に乗るダイナミズム。クラフトマンシップでは、自動車業界だけを切り取れば、ドイツはやや日本寄りの印象を受けるが、俯瞰してみると日本vs欧米の構図は変わらない。

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