2000年頃、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)という言葉で、企業視点における顧客管理をとらえる概念やシステムが広がっていった。CRMの登場によって、顧客毎のOne to Oneマーケティングが実現できたのは、言うまでもない。その後、2003年頃からはCRB(カスタマー・リレーションシップ・ビルディング)、つまり顧客との関係構築を築くためにはどのような考え方が必要なのかというマーケティング視点による取り組みが始まっている。2007年に入ると、バズマーケティング元年とも言われ、SNSやブログなどのCGM普及率が高まったことにより、ソーシャルメディアを利用したマーケティング手法が主流となってきている。

 また、企業としてCRBを実現するために、顧客との関係構築をどのように築くべきか、顧客の心をつないでおくべきかという「エンゲージメント」の概念が、米国発で広まった。日本語でエンゲージメントとは、一般的に「絆」と訳され、顧客との「絆」を長期間継続するために、具体的にどのようなマーケティング施策が必要なのかについて議論されることが多い。エンゲージメントを定義し、メジャーメント化(数値化)する動きが、2007年頃をピークに、様々な団体で活発化していた。

 顧客との「絆」を数値化しよう、という発想自体に問題があるのか、それとも「絆」を数値化すること自体に、問題があるのか分からないが、最終的な結論は結局出ていない。各団体の動きを見ていると、各メディアの「広告効果」に一石を投じた議論から始まっている。議論に参加した広告主や広告代理店、マスメディアやネット業界など、様々な企業が集まり定義を作ろうとした結果、エンゲージメント指標によって失うものが多い企業からの協力を得られず、現在では活動自体が休止してしまっている状況である。

 広告に対する消費者の反応をベースにしたエンゲージメントではなく、ここでは、商品や各マーケティングを通じたエクスペリエンス=経験から蓄積されるブランディングや、顧客との対話型コミュニケーションという観点で、どのような取り組みが必要か、考え方をまとめる。

顧客にどのような「エクスペリエンス」を提供できるか

 分かりやすく例で説明したい。「薄型大型液晶テレビ」の営業マンが三人いたとする。説明を聞くと、

 営業マンAさん 「世界で一番薄く、画面がきれいなテレビです」
 営業マンBさん 「省電力でエコに配慮した、安心のテレビです」
 営業マンCさん 「リビングに家族だんらんのきっかけを提供するテレビです」

と、それぞれ視点が異なる。

[画像のクリックで拡大表示]

 Aさんは、単純に製品を説明しているだけである。パンフレットやインターネットからも、全く同じ情報またはそれ以上を得ることができ、作り手=メーカー視点でしか説明していない。Bさんは、製品説明だけでなく、使い手=顧客視点で「大型では電気代が高いのでは?」という疑問を解消する売り方をしている。しかし、Cさんは、顧客が購入後にどのような体験をするのか、どんな実感がわくのかを想定した上で、商品を勧めている。顧客は営業Cさんの言葉に反応する可能性が高い。つまり、物があふれている現代では、商品やサービスは、そのものの価値よりも、今や利用者側の体験=エクスペリエンスの価値の方が重要視されているためである。

[画像のクリックで拡大表示]

 究極は、

[画像のクリックで拡大表示]

を顧客が求めているとも言える。自分が求めている体験価値に合うものであれば、高い対価を支払う。顧客の期待値が高い商品ほど、高値でも市場に受け入れられるのである。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。