BtoB市場に特徴的なもの。それは分かりづらい業界用語である。筆者が長年見てきたICT業界は、そうした用語が飛び交う代表的な業種だ。「3文字略語」とも呼ばれるキーワードがひっきりなしに登場してくる。1990年頃のSISブーム然り。その後もERP、CRM、DWH、SFA、ASP、SOA、BPMなど、枚挙にいとまがない。BIのように2文字、あるいはSaaSのように4文字のものもあるが、分かりづらいことに変わりはない。

説明する日本語にむしろ注意

 ICTの業界関係者は、こうした状況にもはや慣れっこだ。SaaSが登場してしばらくすると、PaaS、IaaSと3兄弟のように続き、SaaS/PaaS/IaaSと「セット商品」になって、あちらこちらに記載される。

 筆者も業界関係者の一人として、「また新しい言葉が出てきたな」と思う程度で、受け流すことが多い。BYOD(Bring Your Own Device)のように「DIYの親戚みたいで、ストレートなメッセージですね」と思ったり、BI(Business Intelligence)のように「おしゃれな表現だけど…」と思ったりと、様々な印象を抱くものの、言葉自体はそのまま受け入れてその本質的な意味合いを探ることを重視する。

 実は今回の原稿で伝えたいのは、こうした3文字略語自体でなく、ICT業界における表現全般の課題についてである。中には、それほど違いがないコンセプトに新たな3文字略語を付けたことの弊害もある。ただ、もっと気になるのは、ICT業界における説明自体が、相当注意をしないと、理解しづらいものになってしまっているという点だ。

 話を分かりやすくするために、3文字略語ではなく「クラウド」で考えてみよう。クラウド自体は、業界用語から飛び出して「ビジネス用語」になってきた感がある。「クラウド」を手がける企業が自社サービスをどのように説明するか。

 例えば、A社が「弊社のクラウドサービスは、信頼性が高く拡張性もあります」と主張したとしよう。当然ライバルのB社は「信頼性、品質、拡張性に加え、オプションも充実」などと言いそうだ。少し違うタイプのC社はコストパフォーマンスを最初に持ち出しつつ、「柔軟性が高く信頼性も確保しています」と補足するかもしれない。

 こうしたメッセージや説明を聞いてどう思うだろうか。真面目な人は、表現の微妙な差異を認識してくれるかもしれないが、「同じようなことを言っているなあ」と思ってしまう人も多いのではないだろうか。

 業界こぞってクラウドを大合唱することには、そのワードを浸透させるメリットはあるものの、サービス説明まで似通って判別不能になってしまうと、もはや何が何だか分からなくなる。ちょうど、絵の具を混ぜれば混ぜるほど、黒色に近くなってしまうようなものだ。

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