午前1時の東京都心。静かな街中とは対照的に、地下鉄のトンネルの中は熱気に満ちていた。終電後に様々な保守作業を実施しなければならないからだ。東京メトロ日比谷線の東銀座駅付近で進む分岐器レール交換工事に立ち会った。

(写真:大上 祐史)
(写真:大上 祐史)
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 レールは列車が通過する際、車輪と接触することで少しずつ摩耗し、劣化する。摩耗すると軌間が広がり、放置すれば脱線など大きな事故につながる。安全な運行には、こまめな点検や交換が欠かせない。

 レールが摩耗する度合いは、列車の走行頻度や速度、カーブのきつさ、乗車人数による重量など様々な条件で変わってくる。屋外にあるレールでは、気候も要因の1つだ。同じ路線でも場所によってレールの交換頻度は異なる。東京メトロ全線では、1年間に約60km分のレールを取り換えるという。

 筆者が立ち会ったのは、日比谷線東銀座駅から隣の築地駅方面に120mほど進んだ地点にある長さ約90mの分岐器レールの交換工事だ。分岐器とは列車が2方向以上に進路変更するために必要な装置。レールの一部が動く仕組みなので、レールの劣化が進みやすい。

 レールの交換工事は、作業内容が5分刻みで組まれている。午前1時すぎから午前3時すぎまで、わずか2時間のタイトなスケジュールだ。

  1. 午前1時5分~午前1時15分 締結装置の解体
  2. 午前1時15分~午前1時25分 旧レールの撤去
  3. 午前1時25分~午前2時5分 保守車両の到着
  4. 午前1時40分~午前2時20分 新レールの敷設
  5. 午前2時20分~午前3時 締結装置の締め付け
  6. 午前2時25分~午前3時 旧レールなど撤去材の積み込み
  7. 午前3時~午前3時5分 保守車両の試験走行
  8. 午前2時50分~午前3時10分 安全確認

 終電が東銀座駅を発車した後、すぐに作業を始められるわけではない。日比谷線の全ての列車が運行を終えて全区間への送電を止めた後、ようやく工事に着手できる。作業員や工事に使う保守車両が現場に向かったり、現場から撤収したりするのに必要な時間も前後に確保しなければならない。

 日比谷線の最終列車が終点となる中目黒駅に到着するのは午前0時40分ごろ。始発列車は午前5時に動き出す。この間に予定の作業を終え、線路や設備を復旧しなければならない。1日当たり実質2時間の作業を繰り返し、一連の工事が完了するまでに160日ほどを要する。

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