日本ガイシとロームは2021年1月20日、IoT機器に向けた「超高効率の蓄電ユニット」を共同で開発したと発表した。ユニットは、日本ガイシの薄型Liイオン2次電池「EnerCera(エナセラ)」と、ロームの低消費電流技術「Nano Energy」を組み合わせたものである。

 太陽光や室内光、マイクロ波、振動、熱などの環境エネルギーからエナジーハーベスト技術で得た電力をEnerCeraに蓄え、Nano Energy技術を適用したDC-DCコンバーターICでその出力電圧を変換してIoT機器に供給するといった使い方を想定する。日本ガイシによると、「EnerCera とNano Energyを組み合わせることで、電池交換をすることなく長期間使用できるメンテンナンスフリーのIoT機器を実現できるようになる」という。スマートカードやウエラブル端末、見守りシステム、電子棚札、センサー付きRFIDタグ、IoTセンサーモジュールなどの用途に向ける。

日本ガイシとロームがIoT機器向け電源を共同開発
日本ガイシとロームの資料
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 一般にIoT機器は間欠的に動作する。例えば、センサーでデータを収集し、それを信号処理して、Bluetoothなどで定期的に無線伝送する。その頻度は用途によって異なるが、10分に1回だったり、1時間に1回だったりする。つまり、ほとんどの時間は待機状態である。エナジーハーベストで集められる電力量は小さいため、IoT機器の待機時の消費電力が多いと、エナジーハーベスト技術で発電した電力だけではIoT機器を駆動し続けられない。このため従来は、コイン型の1次電池などを使わざるを得ず、メンテナンスフリーのIoT機器の実現は難しかった。

 今回、開発したIoT向け電源技術の特徴は、Nano Energy技術を適用することでDC-DCコンバーターICの待機時消費電流をわずか180nAに抑えられる点にある。ロームによると、「業界で最も少ない待機時消費電流を達成した。当社従来品を含めて、現在市場で入手できるDC-DCコンバーターICの多くは、待機時消費電流が10μA程度だった。最近になって、競合他社が待機時消費電流の少ない製品を投入しているが、それでも1μAを少し下回る程度」という。

 待機時消費電流が180nAと少なければ、IoT機器の待機時間を大幅に延ばせる。例えば、容量が27mAhのEnerCeraを満充電にして電源に用いた場合、6250日と長い待機時間が得られる。待機時消費電流が10μAのDC-DCコンバーターICを使った場合はわずか112日だった。

IoT機器の待機時間を大幅延長
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 さらに、待機時消費電流が180nAと少ないため、エナジーハーベスト技術によって得られる電力が少なくても、EnerCeraへの充電を続けられるというメリットがある。待機時消費電流が多いとDC-DCコンバーターIC自身でほとんど消費してしまうので、EnerCeraに充電できなくなっていた。つまり、照度の低い室内光や、微弱なマイクロ波でも有効に活用できることを意味する。例えば、スーパーマーケットなどの電子棚札に用いた場合、ワイヤレス給電のトランスミッターの台数を減らしたり、照明の影となる場所でも設置できたりするメリットが得られる。

微弱な環境エネルギーを有効利用
日本ガイシとロームの資料
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 今回、日本ガイシとロームは、EnerCeraと、Nano Energy技術を採用したICを組み合わせたデモ基板を試作した。搭載したEnerCeraは、外形寸法が38mm×27mm×0.45mmで、容量が27mAhの「EC3827xx」である。同社が「EnerCera Pouch(エナセラパウチ)」と呼ぶ製品シリーズに含まれるものだ。Nano Energy技術を採用したICは、降圧型DC-DCコンバーターICとリセットICの2つである。このほか、Nano Energy技術は適用していないが、ロームのLiイオン2次電池用充電制御ICを搭載した。デモ基板の面積は56mm×32mmと小さい。厚さについては、「EnerCeraは0.45mmと薄いため、基板に実装した部品の中で最も高いのはコンデンサーの0.8mmである。今後、コンデンサーを最適化すれば、さらなる薄型化が可能」(ローム)という。

デモ基板を開発
日本ガイシとロームの資料
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 なお、今回開発したデモ基板は、エナジーハーベスト技術との組み合わせを想定したものではない。なぜならば、デモ基板の入力電圧は+5Vだからだ。ロームによると、「今回のデモ基板は、EnerCeraを適切に充電して、放電特性を評価してもらう用途に向けたもの。現在、待機時消費電流が180nAの昇圧型DC-DCコンバーターICの開発を進めており、これが完了すればエナジーハーベスト技術に対応することが可能になる」という。

 開発したデモ基板は一部のユーザーに対する配布を始めたところだ。一般ユーザーに向けた販売については現在協議中という。デモ基板の価格は明らかにしていない。

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