伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、2種類のGaNトランジスタを発売した ニュースリリース 。同社が単体のGaNトランジスタを発売するのは今回が初めてである。同社は、2020年9月にGaNトランジスタとゲートドライバーICを内蔵したGaNモジュールを発売し、GaNパワー半導体デバイス市場へ参入している。

2種類のGaNトランジスタを発売
2種類のGaNトランジスタを発売
図中の「SGT120R65AL」は、エンハンストモードHEMT構造のGaNトランジスタ(G-HEMT)。このほか、デプレッションモード構造のGaN FETに低耐圧SiパワーMOSFETをカスコード接続した製品(G-FET)を用意した。 (出所:STMicroelectronics)
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 競合他社は、最初に単体のGaNトランジスタを市場投入し、その後GaNモジュールを発売することが多い。すなわち、STMicroは競合他社とは逆の順番で製品を市場投入した。単体トランジスタよりもモジュールを先に発売したのは、モジュールの方がユーザーである電子機器メーカーの設計負荷が小さく、導入の敷居が低いと考えたからだ。21年8月にUSB PDアダプターなどに向けた5つのGaNモジュールがそろったことで*、今回、次の一手として単体のGaNトランジスタを発売した。通信機器用電源や産業用モーター駆動機器、太陽光発電用インバーター、電気自動車(EV)など、幅広い用途でGaNトランジスタの販売を狙う。

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 今回発売した2種類のGaNトランジスタは、どちらも耐圧が+650Vだが、最適な用途が異なる。「G-HEMT」と呼ぶ製品は、「大電力出力の電源に向く」(同社)という。G-HEMTは、逆回復(リカバリー)電荷量(Qrr)が極めて小さく、最大1MHzと高いスイッチング周波数で動作可能だからだ。もう一方の「G-FET」と呼ぶ製品は、「既存の+650V耐圧SiパワーMOSFETの置き換えを狙う。10kW出力の以下の電源に向く」(同社)という。G-FETはG-HEMTに比べると逆回復電荷量(Qrr)は若干大きいものの、SiパワーMOSFETに比べると大変に小さい。スイッチング周波数は約500kHzに設定できる。

 こうした用途や特性の違いは、デバイス構造が異なることで生じる。G-HEMTは、エンハンストモードHEMT構造のGaNトランジスタであり、単体でノーマリーオフ動作できる。一方はG-FETは、デプレッションモード構造のGaN FETに、耐圧が数十Vと低いSiパワーMOSFETをカスコード接続している。デプレッションモード構造のGaN FETはノーマリーオン動作である。このため、ドレイン端子にSiパワーMOSFETをカスコード接続することでノーマリーオフ動作を実現する。

 G-HEMTは、オン抵抗とパッケージの違いで4製品を発売した。4製品の内訳は以下の通り。「SGT120R65AL」は、Power FLAT 5×6 HVパッケージ封止で、オン抵抗は120mΩ。「SGT120R65A2S」は、2SPAKパッケージ封止で、オン抵抗は120mΩ。「SGT65R65AL」は、Power FLAT 5×6 HVパッケージ封止で、オン抵抗は65mΩ。「SGT65R65A2S」は、2SPAKパッケージ封止で、オン抵抗は65mΩである。Power FLAT 5×6 HVは実装面積が5mm×6mm。2SPAKは外形寸法が6mm×8mm×1mmであり、「多層プリント基板を内蔵し、その上にGaN HEMTチップを実装することで、ボンディングワイヤを不要にして寄生インダクタンスを大幅に削減した」(同社)という。

 G-FETは1製品である。型番は「SGT250R65ALCS」。オン抵抗は250mΩ。パッケージは、実装面積が5mm×6mmのPQFNである。

 G-HEMTのSGT120R65ALはすでに販売を始めており、1000個購入時の参考単価は約3.00米ドル。SGT120R65A2Sは現在サンプル出荷中。SGT65R65ALとSGT65R65A2Sは22年後半に量産を開始する予定。G-FETのSGT250R65ALCSは22年第3四半期にサンプル出荷を始める計画である。