ロームは、ハイレゾリューション(ハイレゾ)音源再生に向けたオーディオ機器向け32ビット分解能のD-A変換器ICを発売した(ニュースリリース)。同社の高音質オーディオ機器向けのICシリーズ「MUS-IC」に含まれる製品である。同シリーズとしてオーディオ機器向け電源ICやサウンドプロセッサーICを発売しているが、D-A変換器ICは今回が初めて。具体的な応用先は、SACD(Super Audio CD)プレーヤーやデジタル・オーディオ・プレーヤー、USB DAC(USBインターフェース経由でデジタルオーディオ信号を入力し、D-A変換器ICでアナログオーディオ信号に変換して出力する機器)などである。

ハイレゾ音源の再生に向けた32ビットD-A変換器IC
(出所:ローム)
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 新製品のD-A変換方式にはΔΣ変調器と複数の電流セグメント回路を組み合わせる電流セグメント方式を採用した。開発に当たっては、ハイレゾ音源、特にクラシック音楽の鑑賞で重要な音質の指標である「空間の響き」「スケール感」「静寂性」を表現することを目指した

 空間の響きは、電流セグメント回路の電源インピーダンスを低減すると同時に配線レイアウトを最適化し、各電流セグメント回路のクロック信号の遅延時間差を低減することで実現したという。「遅延時間差が小さくなると、音の解像度が高まる。この結果、音源を定位させることが可能になった。オーケストラの中で楽器を奏でた場所から音が聞こえるようになる」(同社)。

新製品の内部ブロック図
(出所:ローム)
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 スケール感と静寂性は、デジタルFIRフィルターの阻止域の減衰量を−150dB以下に抑えることで実現したという。阻止域の減衰量が少なければ少ないほど、より小さな音を再生できる。この結果、ダイナミックレンジを広げられるため、スケール感を表現できるという。さらに静寂性については、「単にSN比を高めるだけでなく、観衆のノイズや演奏者の息づかいなどの小さな音を再現することで、演奏が始まる前の静けさをリアルに表現できるようになった」(同社)と説明している。

デジタルFIRフィルターの周波数特性
(出所:ローム)
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 新製品の型名は「BD34301EKV」。出力数は2チャネル(ステレオ出力)。デジタルオーディオ入力信号のサンプリング周波数は32k〜768kHzに、DSD(Direct Stream Digital)入力は2.8MHz、5.6MHz、11.2MHz、22.4MHzに対応する。SN比は130dB(標準値)。全高調波歪(ひず)み+雑音(THD+N)は−115dB(標準値)。ダイナミックレンジは130dB(標準値)である。

 デジタルFIRフィルターには3つの動作モードを用意した。1つはプリセットモード。このモードでは、シャープ・ロール・オフ特性のフィルターとスロー・ロール・オフ特性のフィルターのどちらかを選択できる。2つ目はカスタムモードである。フィルターの演算係数やオーバーサンプリング比をユーザーがプログラムできる。3つ目は外部設定モード。外付けのDSPやFPGAを使ってフィルター処理することが可能だ。パッケージは、外形寸法が12mm×12mm×1mmの64端子HTQFP。動作温度範囲は−25〜+85℃。サンプル価格は9000円(税別)である。

 応用開発に向けて、新製品を搭載した評価ボード「BD34301EKV-EVK-001」を用意した。このボードの電源ICは、MUS-ICシリーズに含まれる電源(リニアレギュレーター)IC「BD37201NUX」である。ロームのウェブサイトのほか、2021年3月以降はインターネット通販会社の米Digi-Keyと米Mouser Electronicsのウェブサイトからも購入できる。参考単価は9万8000円(税別)である。

新製品を搭載した評価ボード
(出所:ローム)
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