日立造船は2021年3月3~5日に開かれた都内の展示会で、電流容量1000mAhの全固体Li(リチウム)イオン2次電池(全固体LIB)セルを発表した。サンプル出荷中の同社従来品(容量140mAh)から7倍以上に大容量化した。「対外的に発表されている全固体LIBの中で、1000mAhという容量は世界最高クラスだ」(同社)という。放電可能温度は、140mAhタイプが摂氏-40~120度、1000mAhタイプは同-40~100度で、いずれも従来のLIBより広い。真空耐性もあるため、宇宙空間で使う機器や、高温環境で使う産業機器などに向ける。「まもなくサンプル出荷を開始する」(同社)

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日立造船が開発した1000mAhの全固体LIB
(写真:日経クロステック)

 全固体LIBは次世代電池として注目が集まっているが、現時点で国内メーカーが量産やサンプル出荷している製品に限ると、容量が100mAhに満たないものが多い。そのため用途が小型デバイスに限定されている。今回の1000mAhの大容量化は、全固体LIBの使い道を押し広げることにつながる。

 開発した全固体LIBの固体電解質は、「三井金属の硫化物系材料を使用している」(事業企画・技術開発本部 機能性材料事業推進室 電池グループ長の西浦崇介氏)。寸法はW50mm×D67mm×H12mmで、平均電圧は3.65V。サイクル特性は、「温度100℃、真空下で100回充放電した時の容量維持率が95.3%」(同氏)。レート特性については、「高温下では1C充電も可能だが、常温下では0.1C充電が推奨」(同氏)だという。放電レートの最大値は使用条件によって変化する。少なくとも、前述のサイクル特性試験の条件で1C放電できることを確認した。

エネルギー密度には課題

 一方、重量エネルギー密度は明らかにしてない。体積エネルギー密度は約 91Wh/Lだとする。既存の液体電解質のLIBは500Wh/L以上であることがほとんどだが、それを大幅に下回った 。当然ながら、EV用電池としてはこのままでは使えない。

 同社が有望視する用途は、宇宙空間で使う機器への搭載だ。真空耐性に加えて高温・低温耐性にも優れるためである。西浦氏によれば、他社の全固体LIBだと揮発成分を含むため真空下で膨張する可能性があるが、同社の場合は「独自の製造プロセスにより、電池内の揮発成分を最小化した」(同氏)とする。わずかに膨張するが、充放電には支障がない。具体的な製造方法は明らかにしていないものの、「溶媒やバインダーを混ぜてスラリーを作製する工程が要らない。粉末を均一な膜状にして電極や電解質を形成する」(同氏)という。

 同社は21年2月に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で全固体LIBを宇宙空間で使用する実証実験を開始すると発表した。国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに従来品の140mAhの全固体LIBを設置し、稼働テストする。月・火星探査機や月面で活動するモビリティーなどにも全固体LIBを将来活用したいという。

■変更履歴
レート特性について、充電レートと放電レートに関する記述が逆転していました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2021/03/08 15:30]