日本精工(以下、NSK)は2022年3月22日、産業機械で使用する高負荷駆動用ボールねじを長寿命化する技術を開発したと発表した(図1)。ボールに加わる荷重のバランスを工夫して、寿命を1.1~2倍に延ばした。駆動方式の電動化が進む射出成型機などへの採用を目指す。
ボールねじとは、モーターなどの回転運動を直線運動に変換する部品。ボールねじには、最大100個程度のボールが入った循環回路が備わっている(図2)。軸が受ける荷重はそれぞれのボールに分散されるが、ボールの位置によって荷重の大きさが異なるという。特にナット両端の位置でボールが受ける荷重が大きくなるため、射出成型機向けのような高い荷重が加わる場合、ボールが破損しやすくなる課題があった。
このような課題に対して、同社が「リアルデジタルツイン」と呼ぶ解析技術によってボールねじの新しい内部構造を設計。加えて、これを具現化する専用加工機や高精度な測定技術によって本技術を開発した。ボールに加わる荷重バランスを最適化して、ボールにかかる最大荷重を下げることで寿命が延びるという(図3)。新たな技術を適用したボールねじは22年6月から受注を開始する。はじめに同社のHTF-SRCシリーズから対応し、順次対応型式を拡大していくという。同技術を適用した製品の売り上げとして、24年に年間1億2000万円を目指す。
電動式の射出成型機においては、主に「型締め軸用ボールねじ」と「射出軸用ボールねじ」に使う(図4)。型締め軸用で2つの型を押し付け、射出軸用で樹脂を型に流し込む。どちらのボールねじにも数十トン程度の負荷が加わるため、高い耐久性が要求される。
近年、射出成型機の市場では「駆動方式が油圧シリンダーを使った油圧式から、ボールねじとサーボモーターを使った消費電力量がより小さい電動式への移行が進んでいる」(同社産業機械事業本部産業機械技術総合センター直動技術センターBS技術部主務の阿部大輔氏)という。開発した技術をそうした用途のボールねじへ適用していく。