ロームは、+150V耐圧のGaNトランジスタ(GaN HEMT)を開発した。サンプル出荷は2021年9月に、量産は22年に開始する予定である。データセンターや無線通信基地局などで使用する+48V入力の降圧型DC-DCコンバーター回路や、無線通信基地局のRFパワーアンプを駆動する昇圧型DC-DCコンバーター回路、D級(クラスD)オーディオアンプ回路、LiDAR(Light Detection and Ranging)の駆動回路、小型ACアダプター、車載用充電器(OBC:On Board Charger)などに向ける。

+150V耐圧のGaNトランジスタ(GaN HEMT)
(出所:ローム)
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 開発品の特徴は、ゲート-ソース間の定格電圧を+8Vに高めた点にある。+200V耐圧以下のGaNトランジスタのゲート駆動電圧は+5V程度というのが一般的。すなわち、開発品では3Vの電圧マージンを確保できた。それに対して、競合他社品はゲート-ソース間の定格電圧が+6Vであり、電圧マージンは1Vしかなかった。このため、スイッチング動作時にオーバーシュート電圧が発生すると定格電圧を超えてしまい、GaNトランジスタが劣化する原因になっていた。今回は、「ゲート-ソース間に印加される電界を分散、もしくは緩和する独自の素子構造を開発することで定格電圧を+8Vに高めた」(同社)としている。

ゲート-ソース間定格電圧の比較
図左は、ゲート-ソース間定格電圧が+6Vの競合他社品の場合。オーバーシュート電圧が発生すると定格電圧を超えてしまっていた。図右は開発品の場合。ゲート-ソース間定格電圧が+8Vと高いため、オーバーシュート電圧が発生しても定格電圧を超えない。(出所:ローム)
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 開発品は、ゲート部にp型GaN層を用いることでノーマリーオフ動作する。特性が異なる3つの製品の市場投入を検討中である。1つ目は、最大ドレイン電流が5A、オン抵抗が40mΩ、ゲート電荷量が2.0nCの製品。2つ目は、最大ドレイン電流が15A、オン抵抗が15mΩ、ゲート電荷量が5.4nCの製品。3つ目は、最大ドレイン電流が20A、オン抵抗が7mΩ、ゲート電荷量が11.5nCの製品である。

 パッケージは、外形寸法が5.0mm×6.0mm×0.9mmの「DFN5060」を採用する。「競合他社品は、BGAパッケージなどを使っており、基板への実装が難しいという課題があった。開発品は汎用パッケージのDFN5060のため、簡単に基板に実装できる」(同社)。また、パッケージ内部のリードフレームとGaNトランジスタチップ間はCuクリップを使って接続することで、寄生インダクタンスを低く抑えた。これで、スイッチング周波数は1MHz以上に設定できるという。

 今後同社は、オン抵抗をさらに低減した+150V耐圧品や、ゲートドライバー回路と+150V耐圧GaNトランジスタを1パッケージに収めたモジュール品などを製品化する計画である。さらに耐圧が+650Vと高いGaNトランジスタも製品化する予定。+150V耐圧以下のGaNトランジスタについては、「現時点では製品化の予定はないが、今後の市場の動向や需要の状況に応じて総合的に判断していきたい」(同社)。なお同社は18年6月に、GaNトランジスタメーカーの米GaN Systemsとの協業を発表しているが、今回の開発品は、ロームが独自で開発したものだという。

GaNトランジスタの今後の製品化計画
(出所:ローム)
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