伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、車載インフォテインメント機器に向けたオーディオG級アンプICを発売した ニュースリリース 。具体的な応用先は、車載ヘッドユニット(車載オーディオレシーバー)、スマート・コックピット・システム、車載パワーアンプ(外部アンプ)などである。同社によると、「車載オーディオG級アンプICの製品化は業界初」という。

車載機器に向けたオーディオG級アンプIC
車載機器に向けたオーディオG級アンプIC
(出所:STMicroelectronics)
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 G級アンプICは、AB級アンプICをベースにし、複数の電源電圧を切り替えて効率を改善したアンプICである。新製品の変換効率(1W出力時)は35%であり、同社従来のAB級アンプICの約19%に比べると16ポイント、同社従来のSB-I級アンプICの約28%に比べると7ポイント上回る。ここでSB-I級アンプとは、アンプ回路自体はAB級アンプだが、制御/駆動方法を工夫することで変換効率を高めたアンプである。

増幅方式が異なるアンプICの出力電力-消費電力特性
増幅方式が異なるアンプICの出力電力-消費電力特性
新製品(Class-G)の出力電力-消費電力特性を、AB級アンプIC(ClassAB)とSB-I級アンプIC(Class-SBi)、D級アンプIC(Class-D)と比較した。新製品は、D級アンプICに比べると同じ出力電力のときの消費電力が大きいが、AB級アンプICとSB-I級アンプICと比較すると小さい。(出所:STMicroelectronics)
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 ただし、新製品の変換効率である35%は、同社従来のD級アンプICの約57%には及ばない。一方で、新製品には、D級アンプICで必須の外付けLCフィルターが不要である。D級アンプICは、PWM信号によるスイッチング時に高周波成分が発生する。このため高周波成分を除去するLCフィルターの外付けが必要で、これが外形寸法やコストを増やす原因になっていた。「新製品を採用すれば、比較的高い変換効率が得られると同時に、LCフィルターを不要にできる」(同社)。

 新製品は、同社のSB-I級アンプに3段階の電源電圧切り替え機能を組み合わせてG級動作を実現したという。電源電圧はVBAT(最大14.4V)、+11V、+8Vの3種類。オーディオ入力信号の振幅に応じて、この3つの電源電圧を自動的に切り替える。VBATは車載バッテリーの出力電圧そのままだが、+11Vと+8Vは集積した降圧型DC-DCコンバーター制御回路を使って生成する。ただし、スイッチング素子は外付けで用意する必要がある。

 新製品の型番は「TDA7901」。同社独自のBCD(バイポーラー、CMOS、DMOS)プロセス技術で製造した。BTL(Bridge Tied Load)出力構成のG級アンプ回路を4個集積した。オーディオ信号入力はデジタル形式。I2S信号とTDM信号を入力できる。分解能は24ビットと高く、サンプリング周波数は44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzが利用できる。このため「いわゆるハイレゾ音源を扱える」(同社)。周波数帯域幅は80kHzと広い。オーディオ出力は、全高調波ひずみ(THD)が30%程度のときに4チャネル×43W(4Ω負荷、+14.4V駆動のとき)、THDが10%ときに4チャネル×27W(4Ω負荷、+14.4V駆動のとき)である。

 車載半導体ICの品質規格「AEC-Q100」に準拠する。パッケージは、36端子PowerSO。22年後半に量産を始める予定。1000個購入時の参考単価は約7.90米ドルである。