日本製鉄は2022年5月10日、二酸化炭素(CO2)排出量が実質ゼロの「カーボンニュートラルスチール」を23年度から販売すると発表した。瀬戸内製鉄所広畑地区に新設した電炉で、グリーン電力を使って生産する。同電炉は22年度下期以降に商業運転を開始する。生産量は年間70tで、主に世界最高級の電磁鋼板と自動車用鋼板を製造する。

 「世界に先駆けてカーボンニュートラルスチールを供給する」――。日本製鉄代表取締役社長の橋本英二氏は同日開催した記者会見で堂々と宣言した。同社によると現在、電炉で高級鋼を造っている鉄鋼メーカーはない。つまり最高級の電磁鋼板を電炉で造るのは世界で初めての試みとなる。「技術的に一番難しいところにチャレンジし、トップランナーに躍り出る」(橋本社長)計画だ。

日本製鉄代表取締役社長の橋本英二氏
日本製鉄代表取締役社長の橋本英二氏
(出所:オンライン会見をキャプチャー)
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 世界的な脱炭素化の潮流で、カーボンニュートラルスチールの必要性は急激に高まっている。橋本社長は「カーボンニュートラルでないと欧州に輸出できなかったり、炭素税がかかったりする」と危機感を示す。顧客からの引き合いも強く「当然、供給を上回る需要がある」(同氏)として、今後生産を拡大する方針だ。

 電炉で生産する鉄鋼をカーボンニュートラルにするには、グリーン電力で必要なエネルギーを賄う必要がある。日本は再生可能エネルギー(再エネ)のコストが高い点が課題だ。橋本社長はカーボンニュートラルスチールの生産を増やしていく上で、「原子力発電の再開が必要だ」という見解を示した。

 一方、高炉で生産する鉄鋼は水素還元製鉄により炭素の使用量を減らせても、ゼロにはできない。そのため、高炉で造る鉄鋼をカーボンニュートラルスチールにするには、CCUS(CO2の回収・再利用・貯留)が必須となる。「日本はCCUSについて技術的な優位性がある」(橋本社長)とし、技術を持つ企業や団体が協力してCCUSを開発していく必要性を訴えた。