ワイヤード(新潟県三条市)と三井情報(東京・港)は2022年5月25日、新潟県三条市に新型レーザーを使った溶接設備を設置したと発表した(図1)。ステンレスなどの金属に限らず銅やアルミなどの非鉄金属や異種材の溶接など、レーザー溶接に興味のある企業が、オペレーターと一緒に試作をすることができる。利用料金は案件により決定する。

図1 設置した溶接設備
図1 設置した溶接設備
8kW のレーザー発振器(右の黒い箱)から、光ファイバーでレーザーを伝送し、6軸のロボットに取り付けた照射点からワーク(作業の対象物)に照射する。(写真:ワイヤード)
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 設置した新型レーザーは、フィンランドCorelaseの「ビームモード可変型ARM(Adjustable Ring Mode)レーザー」。回折格子などのカスタム光学系を利用することなく、発振器内部でリング状と円状の2種類のレーザーを分離発振できるという特長がある(図2)。この2種類のレーザーの出力は、加工中でも独立に可変制御が可能である。このためリング状のビームを使う場合、ワーク(作業の対象物)上の油や塗料を加工前に蒸発させることで加工面の前処理を不要としたり、金属の余熱や後熱用に用いることでろう材なしに割れ感受性の高い金属を高品位で溶接できたりする。スパッタの極めて少ない溶接が可能だという(図3)。

図2 ARMレーザーの特長
図2 ARMレーザーの特長
円状のCenterコアとリング状のRingコアという2種類のレーザーを同時に発振する。出力やその比率は自由に調整できる。(図:ワイヤード)
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図3 加工面の例
図3 加工面の例
従来レーザーでは加工面にボイド(空隙)ができているが、ARMレーザーでは見当たらない。(写真と図:ワイヤード)
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 溶接設備には、8kWのビームモード可変型ARMレーザーの発振器と6軸のロボットを用意した。加工者は、別室からロボットとレーザー出力を制御して加工を行う。

 ARMレーザーの加工は、リング状と円状のレーザー出力を個別に調整できることから、設定の条件出しが複雑になる。2種類のレーザーそれぞれの出力およびその比率を、溶接部位や溶接の軌跡、時間に応じて細かく変化させる必要があるためだ。そこでこの設備ではレーザー加工の専門家とシミュレーションの専門家が一緒になって最適な溶接結果が得られる条件出しを行う。要望があれば、最適なパラメーターを見つけ出した上で、溶接機の製造も受託する。

 今回の取り組みにより、「溶接の現場は職人の経験と勘に頼るところが多い。後継者不足、人手不足が深刻化する中で、経験と勘による作業からデータに基づく技術に変えていくことを支援したい」(ワイヤード会長の井ノ原忠彦氏)という。