シナノケンシ(長野県上田市)は、部品の納入や配膳、完成品の搬送といった業務を省力化する自律走行搬送ロボット(Autonomous Mobile Robots:AMR)「ASPINA AMR(通称)」を開発した(図1、2)。ユーザーインターフェースの改良を図るとともに、小回りがきくボディーと足回りを採用し、製造現場に導入しやすくしている。2021年6月に、予定数10台の試験販売を開始する。
開発品は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を備えており、実際の稼働区域を走らせると自動で地図情報を作成する。このため、既存ラインへ短時間かつ容易に導入でき、工場のレイアウト変更やラインの新設にも対応させやすい。作業者は、ロボットにQRコードを読み取らせる、あるいはタブレット画面の地図上で指定するなどの操作で搬送先を指示できる(図3)。
最小回転径が700mmで、360度のスピンターン(超信地旋回)が可能なため、狭い通路・スペースでも動ける。外形寸法は幅525×奥行き615×高さ250mmで、質量は44kg、最大積載量は100kg。12時間以上の連続動作が可能だ。自動ドアを認識して通過するなど、現場の設備に合わせて走行できる。
その他、人との協働を前提に、安全性にも配慮した。進行方向に障害物を検知すると即座に停止(図4)。その後は状況を確認してから自動で復帰し、回避行動を取る。地図にない障害物を認識した場合は、目的地までの別経路を自動で再探索する。
AMRには、同じく搬送を自動化できるAGV(Automatic Guided Vehicle)と比べて、事前にガイドを床面に引く必要がない、移動範囲が固定ルートに縛られないといった利点がある。半面、多機能なためアプリケーションの操作が煩雑で、設定に時間がかかる。加えて、サイズが大きく狭いライン通路に入り込めないなど、既存のラインに導入する上での課題もあったという。そこで開発品では、ユーザーインターフェースの向上と小回りの利くボディーや足回りの採用により、これらを改善した。
試験販売では、導入者と使用環境や条件などを打ち合わせの上、受注生産する方針。シナノケンシは、そこで得たニーズを基に、量産化へ向けた開発を進める。