ソニーグループは2021年6月10日、自社開発の空撮ドローン「Airpeak S1」を発売した。9月に出荷を開始する。20年11月に発表したドローンプロジェクトの第1弾で、S1は映像制作に携わるクリエーター向けである。独自開発のプロペラやモーター、制御システム、センシング技術などによって、高い敏捷性と安全性を実現。フルサイズミラーレス一眼カメラ「α(アルファ)」を搭載可能な機種で世界最小クラスを実現したという。

ソニーグループが2021年6月10日に発売した空撮ドローン「Airpeak S1」。
ソニーグループが2021年6月10日に発売した空撮ドローン「Airpeak S1」。
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 寸法は高さ約526.8mm×幅591.9mm×奥行き511.8mmで、重さは約3.1kg(バッテリーパックは除く)。最大積載可能重量は約2.5kgである。価格はオープンで、市場推定価格は税込み110万円前後という。

 同14日、Airpeakの開発を統括する同社AIロボティクスビジネスグループ執行役員の川西泉氏は、同日に開幕したドローン関連の展示会「ジャパンドローン2021」の基調講演に登壇した。

ソニーグループ AIロボティクスビジネスグループ執行役員の川西泉氏。
ソニーグループ AIロボティクスビジネスグループ執行役員の川西泉氏。
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 同氏は講演の冒頭で、なぜソニーがドローン事業に参入したかについて説明した。「社内にはドローンは既にコモディティーなのではという意見もあった。しかし、2つの点でやる意味があった。1つは、ドローンによってクリエーターの創造力を高めることができる。カメラ視点やポジションの制約を取り払うことで、これまでにないアングルでダイナミックな映像を撮影できる。もう1つは、業務用ドローンに求められる技術はこれまでのホビー用と比べてかなり高度で、ソニーのテクノロジーを生かせることだ」(同氏)。

 今回ソニーは、独自設計の機体のほか、操縦のための送信機や、機体、カメラなどの操作・確認を統合的に行えるモバイルアプリ、自動飛行向けに飛行計画や管理などを行うWebアプリなどを含め、システム全体を開発した。

 主な特徴は5つ。1.運動性能が高い機体、2.センシングによる安定飛行、3.使いやすいUI/UX、4.カメラレンズのバリエーションが豊富、5.自動飛行による効率的なワークフローの実現である。運動性能については、最高速度90km/h、最大耐風性能20m/s、最大角速度180°/s、最大傾斜角度55°を実現した。通常のドローンより強風下でも安定した飛行が可能なうえ、「ホバリングの状態から80km/hに3.5秒で到達する加速性を備える」(川西氏)。これを実現したのが、独自開発した17インチのプロペラやそれを回転させるブラシレスモーター、そしてこれらを制御するESC(Electric Speed Controller)である。

今回開発したブラシレスモーターとプロペラ。プロペラは社内でいちから開発したという。
今回開発したブラシレスモーターとプロペラ。プロペラは社内でいちから開発したという。
(図:ソニーグループ)
[画像のクリックで拡大表示]

非GNSS環境下でも安定飛行

 2のセンシングについては、同社製のイメージセンサーを内蔵したステレオカメラを機体の5方向(前後左右下)に配置し、それらの画像を独自開発したビジョンセンシングプロセッサーで処理。さらに地磁気、気圧、赤外線測距やIMU(Inertial Measurement Unit)といったセンサーの情報を統合して、自己位置・姿勢を高精度に推定して周囲の空間をリアルタイムに認識する。これによって、屋内や橋梁下などGNSS(全球測位衛星システム)の電波が入りにくい環境下でも安定して飛行するという。

Airpeak S1のシステム構成。自社開発のビジョンセンシングプロセッサー、フライトコントローラー(チップは外販、ソフトウエアは自社開発)、アプリケーションプロセッサー(米Qualcomm製)の3種類の半導体を搭載している。
Airpeak S1のシステム構成。自社開発のビジョンセンシングプロセッサー、フライトコントローラー(チップは外販、ソフトウエアは自社開発)、アプリケーションプロセッサー(米Qualcomm製)の3種類の半導体を搭載している。
(図:ソニーグループ)
[画像のクリックで拡大表示]

 バッテリーは容量2518mAhのリチウムポリマー電池を2個搭載しており、最大飛行時間はペイロードなしで約22分、αシリーズ搭載時に約12分(a7SIII+SEL24F14GMの場合)としている。飛行時間はバッテリー容量に依存するが、「大容量バッテリーのオプションも検討中」(同氏)としている。

 今後の開発では大容量バッテリーのほかに、より精度が高い測量技術(RTK)、LTE/5Gへの対応、SDK(ソフトウエア開発キット)、αシリーズ以外にLiDAR、赤外線カメラなど他のペイロードへの対応などを計画している。

 今後は空撮ドローン以外の産業分野への展開も目指す。「S1はクリエーター向けだが、ドローンは社会課題の解決に貢献できる点で価値が高まってきており、ソニーとしてもこの部分に貢献していきたい」(同氏)。具体的な計画や時期は明言しなかったが、2022年度に解禁される有人地帯での目視外飛行、つまり「レベル4」に向けて開発や事業を拡大する強い意欲を見せた。