インフラの点検や測量、農薬散布、そして物流にも活用され始めた小型の産業用ドローンだが、最大の弱点は飛行時間が多くの場合、15~20分と短いことである。このため、1回の作業に制約があったり、そもそも物流では長距離を飛ばせなかったりする、といった課題がある。

 もちろん、飛行時間を延ばすためにバッテリー容量を増やすという選択肢はあるものの、国内では最大離陸重量が25kg以上になると、航空機相当の厳しい耐空性や信頼性が求められることになる。このため、最大離陸重量を25kg未満に抑えるように設計すると、現状のリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池のエネルギー密度だと、この程度の飛行時間になってしまうのだ。

 そこで注目されているのが燃料電池である。2022年6月21~23日に開催された展示会「Japan Drone 2022」では、産業用ドローンを開発するベンチャーのロボデックス(横浜市)が、燃料電池を搭載することで最大2時間の飛行を目指すマルチコプター型ドローン「aigis one(アイギス・ワン)」の試作機を出展した。2022年10月ごろに開発を完了し、2023年に物流用途などに向けて発売する計画だ。このスケジュール通りに実用化されれば、「国内初の燃料電池ドローンになる」(説明員)という。

ロボデックスが開発した、燃料電池搭載ドローン「aigis one(アイギス・ワン)」
ロボデックスが開発した、燃料電池搭載ドローン「aigis one(アイギス・ワン)」
最大2時間の飛行時間の実現を目指す(写真:日経クロステック)
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 aigis oneは、固体高分子型燃料電池(PEFC)の世界的なリーダーである英Intelligent Energy(インテリジェント・エナジー)が開発した小型モジュールを搭載する。出力は2.4kWで、寸法は130mm×430mm×230mm、重さは3.25kgである。

 さらに水素貯蔵用の高圧ガス容器として、帝人エンジニアリングのFRP(繊維強化プラスチック)複合容器「ウルトレッサ」を搭載する。容量は4.7Lで、重さは4kg弱である。一般の工業ガスは19.6MPa(メガパスカル)の圧力で容器に充てんすることが多く、この場合の飛行時間は80分である。ただし、搭載する容器の充てん耐圧は29.4MPaなので、その圧力で入れれば飛行時間は1.5倍、つまり2時間に延びるという。

aigis oneのカットモデル(一番上)
aigis oneのカットモデル(一番上)
上部に高圧ガス容器を搭載する(写真:日経クロステック)
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 これまで水素ガスを充てんした高圧ガス容器を載せたドローンを飛ばすことは航空法で認められていなかったが、同社は2021年に高圧ガス保安協会の特定案件事前評価委員会を経て、大臣特認を取得。さらに、国土交通省航空局から正式に燃料電池ドローンの飛行許可を取得した。

 aigis oneの主な仕様は、ペイロードが5kg、最大飛行速度が35km/時、最大風圧抵抗が8m/秒。寸法は1528mm×550mm×780mmである。「国内メーカー製のフライトコントローラーを採用した“国産ドローン”である」(説明員)という。価格は、燃料電池システムや高圧ガス容器2本込みで800万~1000万円程度を想定している。