TDKは、厚さが0.76mmと薄いワイヤレス充電向け送電コイルを発売した ニュースリリース 。同社によると「業界最薄である。従来の送電コイルの厚さは3.8mmだったため、新製品は約1/5に低背化した」という(図1)。スマートフォンなどのモバイル機器のワイヤレス充電に使える。応用先は、自動車のセンターコンソール向けワイヤレス充電ユニットやデスクマット、スマホホルダーなど。「こうした用途の一部では、送電コイルが厚すぎて組み込めないという問題があった。新製品を使えば、この問題を解決できる」(同社)。

図1 厚さが0.76mmと薄いワイヤレス充電向け送電コイル
図1 厚さが0.76mmと薄いワイヤレス充電向け送電コイル
(出所:TDK)
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 新製品は、84mm×66mmと広い充電エリアを1つのコイルで受け持つことで薄型化を図った(図2)。従来品はこの充電エリアをカバーするため、3個の巻線コイルを使っていた。具体的には、2個の巻線コイルを横に並べて、残る1個をその上に重ねる構成である。このため、重なった部分は3.8mmと厚くなっていた。また新製品は、コイルの個数が従来の3個から1個に減ったため、それに電力を供給するドライバー回路の実装面積や部品点数を削減できるというメリットがある。

図2 新製品と従来品の比較
図2 新製品と従来品の比較
従来品は、3個の送電コイルを使って84mm×66mmの充電エリアをカバーしていた。このため、2つの送電コイルが重なった部分は、3.8mmと厚かった。一方、新製品は、84mm×66mmの充電エリアを1つの送電コイルでカバーすることで、厚さを従来品の約1/5の0.76mmに抑えた(出所:TDK)
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 新製品はめっき技術で製造した。具体的な製造方法は以下の通りである。まずは、アキレスが開発したナノ分散ポリピロール液を使って、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム上にコイルパターンを印刷する。これをめっき処理液に浸すと、印刷した部分だけに薄いCuめっき膜が形成される。いわゆる無電解めっきが実行される。その後、電解めっきによって、薄いCu膜の上にCu膜をさらに成長させ、これをフェライト板の上に実装することでコイルとする。Cu膜とフェライト板の厚さはどちらも0.3mmで、これに接着剤の厚さを加えると0.76mmになる。TDKは、今回採用した製造方法の新規性について、「従来、PETフィルムの表面は平滑度が高くツルツルしており、めっき膜を形成するのが難しかったが、アキレスが開発したナノ分散ポリピロール液を使うことで形成が可能になった」という(図3)。

図3 開発した製造方法
図3 開発した製造方法
新製品は、めっき処理を2回行うことで製造する。1回目は、アキレスが開発したナノ分散ポリピロール液を用いた無電解めっきである。PETフィルム上にコイルパターンを印刷し、それを処理液に浸すと、印刷した部分だけに薄いCu膜が形成される。2回目は、電解めっきであり、薄いCu膜の上にさらにCu膜を成長させることで0.3mmと厚いCu膜を得る(出所:TDK)
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 新製品の型番は「WCT38466-N0E0SST101」。最大15Wのワイヤレス充電に使える。インダクタンスは10.6μH。100kHzにおける抵抗値は0.139Ωである。Q値(共振の鋭さ)はあまり高くないという。「Q値を高く設定してしまうと、高い効率が得られる最適な充電地点が狭くなり、そこから外れると効率は極端に低下する。従来品はコイルが3個だったので比較的広い範囲で高い効率を確保できた。しかし新製品はコイルが1個だけなので、Q値を低く設定することで、最適な充電地点におけるピーク効率は低下するものの、広い範囲で比較的高い効率が得られるようにした」(同社)。

 新製品は、WPC(Wireless Power Consortium)のQi(チー)規格において、送電コイルの標準デザイン「MP-A28」として登録済みである。すでに量産を始めている。初年度(22年度)の量産規模は5000個/月で、23年度には100万個/年に引き上げる予定。サンプル価格は2200円(税込み)である。