伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、スイッチング電源(AC-DCコンバーター)制御IC(図1)の新製品を発売した ニュースリリース 。新製品と同社のGaNモジュール(GaN素子を採用した電力変換段モジュール)を組み合わせることで、高効率なACアダプターが実現できる。応用先は、ノートPCやスマートフォン、タブレット端末などのACアダプターやUSB PD(Power Delivery)充電器である。

図1 GaNモジュールと組み合わせて使うスイッチング電源制御IC
図1 GaNモジュールと組み合わせて使うスイッチング電源制御IC
(出所:STMicroelectronics)
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 新製品は、同社のGaNモジュールである「MasterGaN」*と組み合わせて使うことを想定している。MasterGaNには、特性の違いでMasterGaN1/2/3/4/5の5製品があるが、いずれでも組み合わせことができる。例えば、新製品とMasterGaN4を組み合わせた最大65W出力ACアダプターのリファレンスボードでは、93%(フル負荷時)と高い効率が得られる(図2)。変換効率が高いと発熱量が削減され、その分だけ放熱部品を減らせると同時に高密度実装が可能になるため、ACアダプターを小型にできる。上述のACアダプターのリファレンスボードは、体積が37cm3と小型にもかかわらず、最大出力は65Wと大きい。このACアダプターのリファレンスボードの電力密度は約1.8W/cm3と高く、「業界最高」(同社)という。

図2 新製品を搭載したリファレンスボード「EVLONE65W」
図2 新製品を搭載したリファレンスボード「EVLONE65W」
最大65W出力ACアダプターのリファレンスボードである。新製品とGaNモジュール「MasterGaN4」などを組み合わせて構成した。外形寸法は58mm×32mm×20mm(体積は37cm3)。出力電力密度は約1.8W/cm3と高い。交流90〜265Vのユニバーサル入力が可能である(出所:STMicroelectronics)
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 新製品は「ノン・コンプリメンタリー・アクティブ・クランプ・フライバック・コンバーター」というトポロジーの電源回路を制御できるため、高い変換効率が得られる。このトポロジーは、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作が可能なアクティブ・クランプ・フライバック(ACF)を改良したものである。同社によると、「既存の高効率ACアダプターに使われている疑似共振フライバックコンバーターに比べて高い変換効率が得られる」という。

 新製品の型番は「ST-ONE」。英Arm(アーム)のCortex-M0+コアを使ったデジタル制御方式を採用する。「スイッチング電源制御ICでは、デジタル制御方式の採用は業界初」(同社)。GaNモジュールのほか、ダイオードブリッジ回路やトランス、2次側同期整流回路、入出力コンデンサーなどを外付けして使用する。

 「USB PD 3.1」規格に準拠した物理層(PHY)回路を集積した。USB PD 3.1規格で定められた拡張機能「PPS(Programmable Power Supply)」の実装に必要なファームウエアは、新製品に集積したフラッシュメモリーに格納されており、ユーザーが開発する必要はない。パッケージは、外形寸法が15.6mm×7.6mm×2.65mm(端子部を除く)の36端子SSOP。すでに量産出荷を始めている。1000個購入時の単価は3.70米ドルである。