オムロンは、検査対象物の傷などを抽出できる人工知能(AI)技術を画像処理システム「FH」シリーズのハードウエアの処理項目として搭載し、提供を開始した(図1、ニュースリリース関連記事)。AIが人の感性や熟練者の経験を再現するため、大量のサンプルを学習しなくても欠陥を認識できるという。従来は目視に頼っていた外観検査の省人化・自動化を図れる。

図1:欠陥抽出AIを搭載した「FH」シリーズ
(出所:オムロン)
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 検査員それぞれがノウハウとして持つ「背景上の違和感を欠陥とする見方」をAIで技術化した。「人が傷と感じる画像の特徴」をあらかじめ学習させた画像処理フィルター「AIキズ抽出フィルタ」により、傷の定義をしなくてもAIが傷の特徴を判断して抽出する。学習データには、同社がこれまで蓄積した画像も含まれており、従来の手法では判別しにくかった不定背景上の欠陥も検出できる。例えば、梨地金属上のスクラッチや樹脂製品上の傷、ヘアライン上の黒い傷、ヘアライン上で影がある箇所の白い傷など、さまざまな材質・色・大きさの傷・欠陥を、調整なしで自動検出する(図2)。

図2:「AIキズ抽出フィルタ」により検出できる傷の例
(出所:オムロン)
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 こうした人間ならではの感性に加えて、検査員が経験によって取得する「バラツキを許容するノウハウ」もAIで再現。良品には含まれない特徴のみを不良箇所として検出する欠陥抽出処理「AIファインマッチング」を搭載した。具体的には、バラツキが発生する良品状態の画像データを学習してAIモデルを作成し、検査の度に「良品と推定されるモデル」を良品復元画像として生成する(図3)。この良品復元画像と撮影画像の差分のみを欠陥として抽出することで、過検出を抑えている。

図3:「AIファインマッチング」による良品復元画像の例
(出所:オムロン)
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 設定の際には、100〜200枚の良品・不良品画像を用意するだけで済む。AIが学習すべき画像を提案するので、どの良品画像を学習すればよいかを迷わずに設定できるという。さらに、用意した画像を使って自動でテストを実行するため、差分検査用のパラメーターは不要だ。目視の検査なら良品と許容される製品を不良品と判定した場合、どの画像をどの程度の度合いで過検出しているかをAIが相違スコアとして可視化するため、どの画像を学習すれば過検出を低減できるかが分かりやすい。

 AIを高機能化しながら軽量化し、FHシリーズへの搭載を実現した。一般的な画像センサーと同じ操作感覚でAI技術を使えるので、AIエンジニアがいなくても安定して稼働させられる。従来は、AIを導入するためにワークステーションレベルのハードウエアを準備しなければならない上、現場環境に合わせたシステムに仕上げるにはAIエンジニアによるプログラミングやメンテナンスが必要で、これらが現場でのAI実用化の障壁になっていたという。