村田製作所は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の製造で使ったPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを同じ用途のPETフィルムとして再利用するリサイクル工程を構築した ニュースリリース 。2022年5月に運用を開始している。

図1 リサイクルしたキャリアフィルム
図1 リサイクルしたキャリアフィルム
(出所:村田製作所)
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 MLCCの製造で使うPETフィルムのリサイクル工程構築の発表は、TDKに続き2社目である*。ただし、リサイクルの内容は両社で異なる。

 一般に、MLCCの製造工程では2種類のPETフィルムを使う。1つは、誘電体ペーストを塗布してシート化する際の基材として使うキャリアフィルム。もう1つは、誘電体シートを複数枚積層して金型でプレスする際の保護材として使うプレスフィルムである。TDKが構築したリサイクル工程は、キャリアフィルムをプレスフィルムとして再利用するものだった。一方、村田製作所が今回構築したのは、キャリアフィルムをキャリアフィルムとして再利用するリサイクル工程である。同社によると、「MLCCの製造工程で使うPETフィルムを同じ用途にリサイクルする工程の構築は業界初」という。なお同社は、今回のリサイクル工程を「水平リサイクルシステム」と呼ぶ。

 同社は、今回構築したリサイクル工程の最大のメリットとして、「PET材料を長期間循環させることが可能になり、環境負荷を軽減できること」を挙げる。ただし、その一方でデメリットもある。それは、「リサイクルしたキャリアフィルムは、バージンのキャリアフィルムに比べてコストが上昇してしまう。しかも、コスト上昇分はMLCCの価格に転嫁できない」(同社)。しかし、それでも今回のリサイクル工程の構築に踏み切った理由は、MLCCユーザーからの強い要望があったからだ。「MLCCユーザーにとって、環境対応の重要度はQCD(品質、コスト、納期)と同じ。このため、リサイクル工程の構築はMLCCメーカーにとって責務である」(同社)。ただし、リサイクル工程の構築で競合企業に先行できれば、競合優位性を獲得できる。その結果、売上高の増加を期待できる。

 今回のリサイクル工程は、国内の素材メーカーと共同で構築した(図2)。まず村田製作所において、キャリアフィルムに残った誘電体ペーストの残さ物や、キャリアフィルム同士の付着防止を目的に塗布した離型剤を除去する。その後、このキャリアフィルムを素材メーカーに戻す。素材メーカーでは、キャリアフィルムを熱で溶かし、バージンのPET材料と混ぜることでリサイクルする。バージンのPET材料とリサイクルのPET材料の混合比は75対25である。「将来的には、リサイクルのPET材料の割合を100%まで高める予定」(同社)。

図2 今回構築したキャリアフィルムのリサイクル工程
図2 今回構築したキャリアフィルムのリサイクル工程
村田製作所において、MLCCの製造で使用した後のキャリアフィルムに残った誘電体ペーストや離型剤を徹底的に除去し、素材メーカーに戻す。素材メーカーでは、このキャリアフィルムを熱で溶かし、バージンのPET材料と混ぜてキャリアフィルにリサイクルする。バージンのPET材料とリサイクルしたPET材料の混合比は75対25である(出所:村田製作所)
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 現時点では、MLCCの製造工程で使用するキャリアフィルムの約1%をリサイクルしている。つまりリサイクル率は1%である。リサイクル率が1%と低い理由として同社は、「リサイクルしたキャリアフィルムをMLCCの製造工程で使用するには、MLCCユーザーの認定を取得しなければならない。このためリサイクル率は一気に高められない。今後、MLCCユーザーの認定を取得しながら、リサイクル率を段階的に高めていく。2030年までに100%に高めたい」という。

 今回、キャリアフィルムをキャリアフィルムとしてリサイクルできるようになった理由は、使用後のキャリアフィルムに付着している誘電体ペーストの残さ物や離型剤を徹底的に取り除く工程を新たに開発したからである。これらが残っているとそれがPETフィルム中の不純物となり、収縮率や固有粘度(IV値)などの特性値を劣化させる。キャリアフィルムはプレスフィルムに比べて、求められる特性値が高い。このため従来は、キャリアフィルムをキャリアフィルムとしてリサイクルすることが難しかった。