TDKは、車載カメラやADAS機器の電源のDC-DCコンバーター回路に向けて、インダクターを3製品発売した。新製品の主な特徴は2つ。1つは、DC-DCコンバーター回路の変換効率を高められることである。「競合他社品に比べると、5A出力時に約5ポイント、10A出力時に約3ポイント高められる」(同社)。

車載電源に向けたインダクター
(出所:TDK)
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 入力電圧が+12Vで出力電圧が+1.5VのDC-DCコンバーター回路において、5A出力時に約85%、10A出力時に約88.5%の変換効率が得られるという。新製品のもう1つの特徴は、磁気飽和によってインダクタンスが公称値から30%低下した時点の定格電流(Isat)が大きいことである。製品によって異なるが42〜54Aの範囲である。同社従来品は27.5〜36.0Aだった。

 このような2つの特徴を備えることができたのは、直流抵抗が小さい金属フレームで2つのフェライトコアを挟み込む構造を採用したことと、磁気損失が小さいフェライトコアを採用したためである。金属フレームの断面積は1mm×0.4mmと大きく、定格電流(Isat)を増やせる。

新製品の構造
(出所:TDK)
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 さらに、今回の構造を採用することで次の2つのメリットが得られたとする。1つは、信頼性を高められたことである。同社によると、「インダクター内部に溶接や熱圧着などによる接合部が存在しないため、オープン(開放)のリスクをゼロにできる」。もう1つのメリットは、放射電磁ノイズ(EMI)を抑えられることである。電流の流れる方向が反対の2本のライン(フレーム)を対向して配置しており、それぞれのラインから放射されるノイズをキャンセルできる。磁性体にメタルコンポジット(金属系複合)材料を使う巻線インダクターに比べるとEMIのピーク値を3〜5dB抑えられるという。

 新製品の名称は「HPL505032F1シリーズ」。インダクタンス値の違いで3製品を用意した。60nH±20%の「HPL505032F1060MRD3P」と、70nH±20%の「HPL505032F1070MRD3P」、±80nH±20%の「HPL505032F1080MRD3P」である。「車載カメラやADAS機器のDC-DCコンバーター回路では、小型軽量化のために高いスイッチング周波数が求められている。さらに、FMラジオ周波数帯域への影響を避けられる2.2MHzが主流になりつつある。このため、インダクタンス値が60n〜80nHと低い新製品を用意した」と同社はいう。使用温度範囲は−55〜+155℃。発売した3製品の主な特性は下表の通りである。

新製品の主な特性
(出所:TDK)
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 3製品いずれも、量産は2021年7月に始める。当初の量産規模は月産2万個を予定している。サンプル単価は110円(税込み)である。