ロームは、自動車に搭載する複数のディスプレーへの映像伝送に向けたSerDesチップセットを発売した ニュースリリース 。映像信号を送信するシリアライザー(トランスミッター)ICと、受信するデシリアライザー(レシーバー)ICの2チップから成る(図1)。伝送可能な映像信号の画素数は最大1980×1080(フルHD)、フレーム周波数は最大85Hzである。

図1 車載マルチディスプレーに向けたSerDesチップセット
図1 車載マルチディスプレーに向けたSerDesチップセット
(出所:ローム)
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 新製品の特徴は、デシリアライザーICにデイジーチェーン接続(数珠つなぎ)機能を搭載したことである(図2)。デシリアライザーICにシリアライザー回路を搭載することで実現した。このデイジーチェーン接続機能を使えば、1つのシリアライザーICに複数のデシリアライザーICをデイジーチェーン接続して、複数のディスプレーに対して映像信号を伝送できる。同社によると、「従来の一般的なSerDesチップセットは、シリアライザーICとデシリアライザーICを1対1で接続する必要があったため、車載マルチディスプレー用途では映像伝送ケーブルの配線が複雑化する問題を抱えていた。新製品を使えば、シリアライザーICを削減でき、配線を簡素化できる」という。

図2 デイジーチェーン接続で映像伝送ケーブルの配線を簡素化
図2 デイジーチェーン接続で映像伝送ケーブルの配線を簡素化
自動車内において、カーナビ画面などを表示する運転席前のディスプレーと、インスツルメンツパネル、ルーム・ミラー・ディスプレー、2台の後部座席ディスプレーに映像信号を伝送するケースである。デシリアライザーICにシリアライザー回路を搭載したため、複数のデシリアライザーICをデイジーチェーン接続することが可能になった。この結果、シリアライザーICの個数を削減でき、映像信号ケーブルの配線を簡素化できる。(出所:ローム)
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 また新製品には、もう1つ特徴がある。それは、巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)による映像信号の監視機能を搭載したこと(図3)。「映像信号を作成するSoCチップからディスプレーまでのエンド・ツー・エンドで映像信号が正しく伝送されているかを確認できる。フルHDの映像信号を伝送できるSerDesチップセットでは、CRC値による監視機能の搭載は業界初」(同社)。

図3 CRC値を使って映像信号を監視
図3 CRC値を使って映像信号を監視
映像信号が正しく伝送されていることを2つの系統で確認する使い方を想定する。 1つの系統は、SoCからデシリアライザーICまで。シリアライザーICやデシリアライザーICにおいて、受け取った映像信号に埋め込まれたCRC値と、その映像信号を演算して得られるCRC値を比較して、正しく伝送されているかどうかを確認する。もう1つの系統は、デシリアライザICとディスプレーである。外詰めのマイコンを使って、両者に格納されたCRC値を比較することで、正しく伝送されているかどうかを確認する。(出所:ローム)
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 発売したシリアライザーICの型番は「BU18TL82-M」、デシリアライザーICは「BU18RL82-M」。シリアライザーICに入力可能な映像信号は、「OpenLDI(Open LVDS Display Interface)」規格準拠の信号を2チャネル、もしくは「MIPI DSI(Mobile industry Processor Interface Display Serial Interface)」規格準拠の信号を4チャネル。映像出力は「CLL-BD(Clockless Link-BD)」信号を2チャネルである。デシリアライザーICに入力できる映像信号はCLL-BD信号を2チャネル。映像出力はOpenLDI規格準拠の信号を2チャネルである。なおCLL-BDは、クロックエンベデッド方式を採用した同社独自のデータ伝送方式であり、最大データ伝送速度は3.6Gビット/秒である。

 シリアライザーICとデシリアライザーICとの接続距離は、使用する映像伝送ケーブルに依存するが、最大15mを確保できるという。デシリアライザーICにイコライザー機能を搭載することなどで接続距離を延ばした。なお、シリアライザーICにプリエンファシス機能やデエンファシス機能は搭載していない。

 シリアライザーICとデシリアライザーICはどちらも、車載半導体ICの品質規格「AEC-Q100」に準拠する。パッケージはどちらも、外形寸法が9.0mm×9.0mm×1.0mmの64端子VQFN。動作温度範囲は−40〜+105℃。すでにサンプル出荷を始めている。サンプル品の参考単価はどちらも1650円(税込み)。量産は22年9月に、月産20万個規模で開始する予定である。