スウェーデンHexagon(ヘキサゴン)Manufacturing Intelligence(HMI)グループは、同グループのエムエスシーソフトウェア(MSCソフトウェア、東京・千代田)が手掛けるシミュレーション・ソフトと、ヘキサゴン・メトロジー(相模原市)が手掛ける計測システムとの連係により、機械製品の品質作り込みに向けたデジタルツインの提案を本格化させる。HMI JapanプレジデントでMSCソフトウェア代表取締役社長の加藤毅彦氏らが明らかにした。CADデータを実測データに合わせて修正し、設計と生産技術の検討をより現実に近い形にしよう、という考えに基づく(図1)。

図1 CADデータを現実に合わせて修正
検査データに合わせてCADをモーフィングしたり、加工成形シミュレーションの結果で板厚を調整したりする。(出所:HMI Japan)
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 加藤氏によれば「CADデータは現実とはずれている」。ずれの代表的な原因が加工工程における材料の硬化や、板金プレス成形工程での板厚の微妙な変化といった加工に伴う変化であり、これらは設計者が意図していないためCADデータに織り込まれていない。このCADデータで性能評価のシミュレーションを実行しても「結果は現実と10%程度ずれるのが普通」(加藤氏)。そこでこのずれを解消するために、製品の形状や特性の実測データをCADデータに反映させるプロセスが必要になる。

CADデータをモーフィング

 HMI Japanが想定する製品設計の業務フローは次のようになる(図2)。まず3D-CADで設計初期案を作成し、加工成形シミュレーションの結果や試作品の測定結果、前機種などで得られたCADデータと実測値の差を取り込んでCADデータを補正し、実形状にする。補正後のCADデータをHMI Japanは「Production Twin」と呼ぶ。ここではCADデータを実測値などに合うよう変形させるモーフィング機能などを用いる。

図2 加工成形時の影響を織り込んだ製品設計のフロー
機械学習を応用して設計変数を変えて最適案を見つける手続きを含む。(HMI Japanの資料を基に日経ものづくり作成)
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 次に、このProduction Twinを利用して、設計変数を変更した複数の設計案を作成して性能評価のシミュレーションを実行する。パラメトリックにモデルを変更してシミュレーションを実行できるツールなどを利用する。

 さらにこの結果を機械学習にかけて、設計変数から性能や特性を瞬時に算出できる学習モデルを生成。シミュレーションの観点からはこれを「ROM(Reduced Order Model、低次元モデル)」とする。部品ごとのROMを合成して製品やユニット全体の性能や特性を得られるモデルを作成し、ここで性能や特性を最適にする設計変数を探索し、設計案を確定する。このモデルには、製造工程で生じる変形などを盛り込み済みであるため、現実の製品を高精度に予測したものになると期待できる。

検査データを設計に織り込む

 以上の業務フローは、解析計算技術に加えてモーフィングやパラメトリックなシミュレーション実行、ROMモデルの作成と合成といったCAE関連の要素技術と、3D計測技術を組み合わせて実現する。HMIは各要素技術を担うツールとともに、CADデータ、Production Twin、シミュレーションデータ、ROM、計測データなどを一元的に扱うデータ管理システムを提案していくという。

 「このようなフローになれば、検査の意味や検査データの位置づけが変わる」(HMI Japan先端技術開発室室長の立石源治氏)。現状では多くのメーカーで、検査は良否判定のみを目的とし、判定結果を得たら検査データを廃棄してしまう場合が少なくないという。しかし今後は「検査の役割として、新たに設計品質を向上するためのデータ集めが加わる」(立石氏)としている。