三菱電機は2019年9月12日、加工が難しい半導体材料のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を効率よくスライスできる放電加工機「DS1000」を同年11月1日に発売すると発表した(ニュースリリース図1)。素材に20本のワイヤーを近接させて同時に放電を起こし、ウエハーを20枚ずつ切り出せる。ダイヤモンド砥粒などを付着させたワイヤーで切断するワイヤソーと比較すると、加工速度を60%向上でき、ランニングコストを80%削減できる。さらに、材料の有効活用率を20%程度改善できるという。

図1 半導体材料のスライス加工用ワイヤー放電加工機「DS1000」
(出所:三菱電機)
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 加工部には20本のワイヤーを最小600μm間隔で並べる。加工点は複数だが、1本の放電ワイヤーを周回させて使う仕組み(図2)。ワイヤーへの給電機構を20カ所にそれぞれ設けた上、新開発の「マルチワイヤ放電制御」により、20カ所で同時に放電を起こす。複数の加工部は相互にワイヤーで導通しているものの、1カ所の放電による影響(電圧の低下)が隣接する加工ポイントでの放電を妨げないように、電気的な独立性を高く保てる機器構成にした。

図2 並列加工の仕組み
1本のワイヤーを20周させ、加工部にはワイヤー20本が並ぶ。(出所:三菱電機)
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 従来のワイヤソーでは、SiCやGaNの硬さや脆性により、加工効率を上げるのが難しかった。ワイヤソーはさらに、材料に接触するため加工反力が大きく、ワイヤーの位置変動により加工時に除去する溝の幅が広がる。加工面の凹凸や微小な割れも生じるため、ウエハー形状にしたあとの研削加工で一定の削り代を除去する必要がある。放電加工はワイヤーが材料に接触しないため、加工溝幅を狭くできて材料の有効活用率を向上でき、加工品位も向上する。

 4インチの単結晶SiCを10並列でスライスした例では、ワイヤーの直径が0.1mmでワイヤーの間隔が600μm、加工溝幅が最大156μmでウエハーの平均板厚は446μm、加工時間は10時間だった(図3)。ウエハーの厚みのばらつきは14μmだった。

図3 4インチ(約10㎝)のSiCをスライスした例
ワイヤー(加工溝)のピッチが600μm、平均板厚は446μm。 (写真:日経 xTECH)

 ランニングコストは、ワイヤーが単純な金属線で済むため、ダイヤモンド砥粒を必要とするワイヤソーよりも安価になる。装置の価格は9500万円で、年間10台の販売を目標とする。名古屋製作所で製造し、「少なくとも最初は、主に日本国内の顧客に販売する」としている。