TDKは、使用できる上限温度が+125℃と高い車載機器向け積層型コモン・モード・フィルター(コモン・モード・チョーク・コイル)を発売した ニュースリリース 。「+125℃で使える積層型コモン・モード・チョーク・コイルの製品化は業界初。当社既存品は+105℃までしか使用できなかった」(同社)。使用上限温度を+105℃から+125℃に高めたため、適用できる応用先が広がった。「+105℃品では、カーナビやドライブレコーダーなどの車載アクセサリーにしか使えなかったが、+125℃品ならば、ADAS機器やDMS(Driver Monitoring System)機器、IVI(In Vehicle Infotainment)機器、車載カメラなどに使用できる」(同社)。

使用上限温度が+125℃と高い、車載向け積層型コモン・モード・チョーク・コイル
使用上限温度が+125℃と高い、車載向け積層型コモン・モード・チョーク・コイル
(出所:TDK)
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 新製品の外形寸法は1.2mm×1.0mm×0.5mmと小さい。いわゆる「1210サイズ品」である。なお、巻線型のコモン・モード・チョーク・コイルではすでに、使用上限温度が+125℃品が販売されている。ただし「巻線型は、実装面積が2.0mm×1.2mmと大きく、厚さは1mm程度だった」(同社)。今回の新製品を使えば、「実装面積と実装高さを削減でき、設計自由度を高められる」(同社)。

 使用上限温度を+125℃に高められた理由は電極構造にある。同社既存品では、フェライト材料の素体の上にAg電極層、Niめっき層、Snめっき層の順番で形成していた。今回の新製品では、Ag電極層とNiめっき層の間に導電性樹脂層を挟む構造に変更した。「電極を構成する各材料はヤング率や熱膨張係数が異なる。使用温度が高くなると、その違いによって応力が発生して素体にダメージを与え、最悪の場合、内部配線が断線してしまう。今回新たに挟み込んだ導電性樹脂層はクッションの役割を担う。すなわち、応力を吸収して、素体へのダメージを軽減できる。こううして+125℃で使えるようになった」(同社)。

導電性樹脂層を追加
導電性樹脂層を追加
左は、既存品の電極構造。右は、新製品の電極構造。Ag電極層とNiめっき層の間に導電性樹脂層を挟んだ。(出所:TDK)
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熱衝撃試験の結果を比較
熱衝撃試験の結果を比較
左は既存の電極の場合。−55℃と+125℃の環境に繰り返しさらすと、素体にクラックが入り、内部電極が切断されてしまった。右は新製品の電極の場合。熱衝撃試験後も、素体へのダメージは一切なかった。(出所:TDK)
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 新製品は同社の「KCZ1210AHシリーズ」の第1弾で、型番は「KCZ1210AH900HR」である。コモンモードやディファレンシャルモードに対するインピーダンス特性や、挿入損失特性は下図の通り。ディファレンシャルモードに対する遮断(カットオフ)周波数は2.5GHzと高いため、データ伝送速度が最大5Gビット/秒の差動インターフェースのノイズ対策に使える。具体的には、LVDSやMIPI、USB 2.0などである。

新製品のインピーダンス特性と挿入損失特性
新製品のインピーダンス特性と挿入損失特性
左はインピーダンス特性。右は挿入損失特性である。(出所:TDK)
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 使用温度範囲は−55〜+125℃。使用可能な湿度は最大85%RHである。このほかの主な特性は下表の通り。車載用受動部品の品質規格「AEC-Q200」を、今後取得する予定という。量産は21年9月に始める予定。当初の量産規模は月産1000万個とする。サンプル品の参考単価は33円(税込み)である。

新製品の主な特性
新製品の主な特性
(出所:TDK)
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 今後同社はKCZ1210AHシリーズの製品ラインアップを拡充する予定である。拡充の方向は2つある。1つは、遮断周波数を高めること。まずは遮断周波数を6GHzに高めて、最大12Gビット/秒のデータ伝送速度で使える製品を22年に投入する予定。ソニーが開発した差動インターフェース規格「GVIF(Gigabit Video Interface)」などへの適用を想定する。さらに、遮断周波数を10GHzに高めて、最大12Gビット/秒のデータ伝送速度で使える製品を検討している。もう1つの方向は、使用上限温度を引き上げることである。+150℃がターゲットだという。